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□Crimson eyes
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ツナは、手渡された大きな布袋を背中に担ぐと、その重みにふらふらとしながら通りの端を歩き始めた。

ふわふわの薄茶色の髪に大きな瞳、質素なシャツとパンツを身に付けた身体は小柄で酷く細い。
足元には、今にも破れそうなほど古い、汚れた靴を履いていた。

「おい、遅くなったらただじゃおかねぇからな!」
「っ、はい…!」

背後からかけられた怒声に、ツナはふらつく足を叱咤して道を急いだのだった。

ツナは、この町の外れに住む十四歳の子どもだ。ただ両親はいないので、いろんな店の手伝いをしてはその日生活するだけの賃金を貰って暮らしていた。

だが、

「……ねぇ…ほら、あの子……」

頼まれた荷物を指定された場所へ運ぶ途中、不意にそんな声が聞こえてきて。ちらりと視線を向ければ、通りの反対側にいた複数の住人達が、ツナを見て何やら小声で話していた。
それも心地いいものではなく……嫌悪するような目を向けて。

そしてそのような視線は、あちらこちらから突き刺さってきた。同時に聞こえてくる会話。

「ああ、例の……魔術師か何かなんだって?」
「でも異端なんだって…手から炎を出すとか…」
「気味が悪いな…」

嫌悪、畏怖……得体の知れない不気味な何かを見るような目で見られて、

「………」

ツナはうつむくと、逃げるように通りを進んだのだった。

(好きで、こんな力持ってる訳じゃないのに……)


町人達の言うことは本当だ。ツナは物心着いた時から、その身に炎を宿す不思議な力を持っていた。

この世界には魔術なるものが存在し、国軍にもかなりの魔道師が仕えているので珍しい訳ではない。

だがツナは……詠唱も魔方陣も、道具も何も使わずに炎を出すことができる特異な体質で。

そのために町の住人からは異端な存在として忌み嫌われ、敬遠されていた。

「……ああ…ありがとうな」
「………」

目的地である家に荷物を届けると、そこの家主はぶっきらぼうに言い放ってそれを受け取った。その瞳はツナを映そうとはせず、さっさと出ていけというような表情をしている。

いつものことなので、ツナも軽く会釈をしただけで早くに家を後にした。

非難の目で見られるのも陰口を叩かれるのも、邪険に扱われるのももう慣れた。幸い食べていけるだけの仕事は貰えるし、今の自分にはこうして生活していくしかないのだから。

(それにしても……)

それよりも、ツナは昨夜に見た夢のことが気になっていた。

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