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□Crimson eyes
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そこは、完全な暗闇だった。
左右を見渡しても何も見えない。何の音も聞こえない。
(ここ…どこ……?)
身体を動かそうとしても上手くできなかった。意識もはっきりしなくて、目の前がぼんやりと霞んで見える。
だが不思議と、怖いとか不安だとかいう気持ちはなかった。全く怖くはないと言えば嘘になるが……ただ、空気がひんやりとしたそこは、どことなく寂しいと感じる場所で。
その時、
『―――――』
(………?)
それまで何の音もしなかったその空間に、微かに何かが聞こえたような気がした。
(な、に……?)
『――、―――!』
(誰…?聞こえない、よ……)
それは、誰かの声だった。何者かが何かを言っている。
だが誰かに聞かせるためのものではないのか、少しも聞き取れなかった。
ただ、微かに聞こえるだけなのにその響きは重く、言葉では言い表わせない激しいものを孕んでいて。
(やだ…聞こえない…もっと……)
何故だろうか。それが酷く不安で、焦りが募っていくのは。
何とか身体を動かして、声のする方へと向かおうとするのだが一歩も動けない。
その間にも、声はだんだん遠く離れていくようで。
(駄目…早く……!)
その時、
『――…ぇ…――て、…る……!』
「っ……!」
真っ暗だった空間に、煌めく何かが一瞬見えたような気がした。
それは、血のように赤い―――
「―――っ!」
そこで、その少年は目を覚ました。勢いよく跳ね起きて、ばくばくと鳴り響く心臓を手で押さえる。
周りを見渡せばそこは暗く、まだ夜だということが分かった。カーテンなどない、ひび割れた窓からは月の光が差し込んでいる。
(ゆ…め……?)
窓から見える、ぼんやりと浮かんだ月を見上げながら、
(また…あの夢だ……)
少年……ツナは、心の中でそう呟いたのだった。
***
ボンゴレ王国……小国だが豊かな自然と恵みの溢れる軍事国家だ。周りを大国に囲まれながらも独立した国家を築き上げているのは、聡明な王の下、屈強な兵士達で編成された軍が守っているからである。
平凡だが穏やかな、平和で住みやすい国。
だがそんなボンゴレも、近頃国を脅かされるような問題を抱えていた。
「おら!さっさと運ばねぇか!」
「す、すみません…!」
王都からさほど離れていない場所に位置する、とある小さな町。たくさんの露店が立ち並ぶ通りの隅で、
「次はこれだ、早く行ってこい!」
「は、はい…!」