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□In the water
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沈まないように縁をしっかりつかんで、ばしゃばしゃと足を動かす。息を継ぐ練習も兼ねているので、苦しくなっては顔を上げ必死に息を吸うことを繰り返した。
だが、
「そうそう、なるべく身体は水平に……足はそんなに大きく動かさなくても良いぜ」
「っ……!」
側で男がそう言いながら、たまに身体が沈まないよう腹部と足の付け根辺りを下から手で支えてくるのだ。沈みそうになっては触れられて、その度に身体がびくついてしまう。
何だかくすぐったくて、それでいて良く分からない感覚が走り抜けて。
(っ、駄目だって…!集中…集中……)
だが、身体が強ばれば強ばるほど沈み込んでしまって、その度に男に触れられるという悪循環になっている。そろそろ息を継ぐのも足を動かすのも疲れてきたのもあって、ツナは内心焦っていた。
その時、
「ほら、また沈んで……」
「っ……!」
なかなか身体が安定しないツナに、男がしっかりと固定するため身体に触れた時だった。偶然上半身を滑るように動いた片方の手が、剥き出しになった胸の突起に触れたのは。
その瞬間、
「ぶっ…!げほっ…ごほごほっ!」
「うわっ、おい…!」
そこからびりびりとした何かが走って、一瞬で身体の力が抜けてしまったのは。縁をつかんでいた手を離してしまい、深く頭が沈む。
ついでに、大量の水を飲み込んでしまった。
「っ、大丈夫か…!?」
「げほっ、げほっ…ふぐ、ふぇ……!」
鼻と喉が痛くて胸が苦しい。半泣きのツナを、男が慌てて抱き上げて。
しばらく咳き込み息を乱していたツナだったが、
「はぁ、はぁ……っ、ぁ……!」
ようやく収まった頃のろのろと顔を上げて、再び顔を真っ赤にさせたのだった。
何故なら……男に、お姫様抱っこをされていたから。直に感じる肌の感触だとか、水の中でも分かる体温だとか……たくましい腕に、胸元に……顔から火が出るかと思った。
「ご、ごめんなさっ…はぁっ…も、大丈夫だから、下ろして…!」
「無理すんなって!ちょっと休憩しよう」
「っ……!」
ふわりと縁に座らされて、男もその隣に腰をかける。
ツナは、恥ずかしくて仕方がなかった。ばた足さえもろくにできない上に、あんな……
(何で…俺……)
胸に触られた瞬間に走った衝撃。女の子でもないのに、こんな所で感じてしまうなんて。
こんな状態で、これから先やっていけるだろうか……情けなさや不安に、顔を上げることもできなかった。