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□留まり木
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「―――ご報告は、以上です」

深夜。昼間活動する全てのものが、もう完全に寝静まるであろう時刻。

大理石でできた巨大な城の最上階……月の微かな明かりとランプの光だけでぼんやりと照らされた部屋の中に、まだ年若い……だが凛とした声が響いて、やがて止んだ。
品の良い調度品と天蓋付きのベッドのあるそこは、どうやら誰かの寝室らしい。

そしてそこには、二人の人間がいるようだった。

一人は、煌めく金の髪に同じ色の瞳をした男。まだ年若い、神に造られたかのような美貌は……だが研ぎ澄まされた氷の刃のような鋭い瞳、そして何者をも従わせる雰囲気を持つ。
ゆったりとした絹の衣を身に付けて、ベッドに緩やかに腰をかける姿は、何か壮絶なものを感じさせられた。

この男こそが、この国のトップであり絶対的な支配者である……国王ジョットだ。

そしてもう一人は……まだ十代半ばもしくは後半くらいの、幼さの残る少年だった。柔らかい薄茶色の髪にやはり同じ色の瞳、成長途中の細い身体を厳かな装飾のなされた軍服に包む姿は、随分と年不相応に見える。
だが、前髪から覗く瞳は意志の強さを感じさせられ、静かでいて力強い表情はかなり大人びていた。

それは、王の親衛隊であり特別な任務を授けられる特殊部隊の隊長……沢田綱吉だった。

ここは王の寝室。中へは限られた人間しか入れない。
身の回りの世話をする人間や側近でさえも、ジョットが認めた人物しか入ることは許されないのだ。

そして綱吉は、その認められた数少ない人間なのだが……

「………」

定例の報告を終えた綱吉は、ベッドに腰をかける王の前で跪いたまま顔を上げようとはしない。ただ静かに、主の言葉を待つのだ。

しばらくして、

「……黒曜の動きは分かった。引き続き警戒を解くな。そして、南の護りをさらに強固にする必要がある」
「は……」

発せられた王の声は澄み渡っていて、ただ逆らえない、支配されるような威圧感がある。

ジョットはその若さで王位を継承した、聡明で実力のある国王だ。何よりも民を愛し国を愛し、そのために身を尽くしている。

そのため民からは愛され、下臣達からも敬愛されていた。

だが、

「今日はもう良い。明日、南に援軍を向かわせるよう手配しろ」
「はっ…!」

日中の様々な任務をこなし、その定例報告が終われば綱吉の一日は終わる。そしてジョットの言葉に、内心安堵しかけた時だった。

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