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□An instinct
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だが、

「っ……!」

何かを引き裂くような音と衝撃に、驚いてキツく閉じていた目を見開く。映ったのは、無惨にも引き裂かれた自分のシャツで。

ザンザスが素手で引きちぎったらしい。さらされた肌が、ひんやりとした空気に撫でられる。

「な、に…ゃっ……!」

訳が分からないでいると、ザンザスがさらに顔を近付け首筋に顔を埋めてきて……肌に感じた他人の吐息に、ツナは思わず身体を捩らせた。

その瞬間、

「っ、痛いっ……!」

肩口に歯が触れたと思ったら……思い切り噛み付かれて。走った痛みに、悲鳴を上げてしまう。

「いたっ、ぁ…痛い…!」
「………」
「やだっ…ぅぅっ…!」

まさか食い千切られるのではと思うほど強く噛まれて、じんわりと涙が滲んだ。だがそれよりも、まるで獣のような行為をするザンザスがただ恐ろしくて。

「やだやだっ…はなしてっ…!」
「暴れるなカス……殺られてぇのか」
「ぃ゙っ…!」

すると、低く鋭い声で脅され別の場所に噛み付かれて、暴れていた身体が強ばった。だがツナは、この恐怖から解放されたいという気持ちでいっぱいだったのだ。

「ふ、ぇ…帰して…!家に、帰してよぉっ…!」

瞳からぽろぽろと涙が溢れてくる。いつ殺されるか分からない恐怖に、普通の中学生であるツナが耐えられる訳がなかった。
泣いてもザンザスが許すとは思えなかったが、今の自分にはこの男に懇願することしかできなくて。

そもそも、彼は一体何がしたいのだろうか。こんな想いをするくらいなら、いっそのことあの時何も分からないまま殺してくれれば良かったのに、とさえ思ってしまう。

「ぅ、ひっく…ふぇ……」
「………」

だが、ツナは知らないだろう。ザンザスが、表情を歪ませ涙を流すツナを、どんな目で見ているのかを。

薄暗い中、ぼんやりとした明かりに照らされた白く滑らかな肌を見て、唇を舐め上げたのを。

そして、ツナの願いはあっさりと打ち砕かれることになる。

「無駄だ」
「っ……!」
「てめぇは一生、ここで俺に飼われることになった」
「っ、ぇ……?」

一瞬、何を言われたのか分からなかった。まず殺す気がないという意思に、安心するよりも訳が分からなくなる。
それに、飼うという言葉が何を意味するのか、すぐには理解できなくて。

「な、に…どういう……」
「日本へ行った時、すぐにでもてめぇを殺すつもりだったが……気が変わった」
「っ、ぁ……!」

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