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□An instinct
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だが逆を言えば、それまでは襲われることはない……と、どこか安心していたというのに。
「っ、ん……」
浮上した意識にゆっくりと目を開ければ、そこは薄暗くひんやりとした空気が漂っていた。石造りの天井や壁、背中に感じる柔らかい感触に、ここがどこかの部屋の中で、ベッドか何かに寝かされているということが分かる。
ただその部屋には窓がなく、ぼんやりとしたランプがあるだけで……外の様子が分からないので、今が昼なのか夜なのかも分からなかった。
(ど、こ…ここ……?)
何故こんな所に寝ているのか、今まで何をしていたのか……まだぼんやりとした頭では、そこまで思い出すことができない。
だが、
「っ……!」
その時急に感じた殺気に、ツナはびくりと身体を強ばらせた。それは、つい先ほど感じたものと同じ……
「ぁ……!」
視線を巡らせて、ようやくそこに誰かがいることに気付いた。そしてその赤い目と視線が合った瞬間、先ほど何があったのかを思い出す。
自分はあの山の中でこの男と出会い、そして……どうやら、この場所に連れてこられたらしい。
そしてこの男は、
「ザン…ザス……」
一週間前に初めて出会い心底恐怖した、そしてボンゴレ十代目の地位とリングをツナと奪い合う男……ヴァリアーのボス、ザンザスだった。
漆黒の髪に同じ色の隊服、整った顔をしているが鋭い目付き……そして、血のような深紅の瞳。
その視線や全身から放たれるプレッシャーは凄まじくて、ツナはただがたがたと震えながら見上げることしかできなかった。
「……目が覚めたのか、ドカス」
「っ、ゃ…や、だ……!」
射殺されそうな視線に、必死でベッドの上を後退る。だが、ツナにはもうそれが限界だった。
本当に殺されると思ったのだ。自分は、ただボンゴレの血縁者というだけでボス候補にされて……この男にとっては、邪魔者以外の何物でもないのだから。
だが、
(で、も…何で……)
それならば何故、あの山の中で始末しなかったのだろうか。正直ツナは、あの瞬間に確実に死を覚悟したというのに。
すると、
「っ、ぁ……!」
動けないでいると腕を強くつかまれて、乱暴にシーツの上へ引き倒された。咄嗟に逃げようとする身体を圧倒的な力で押さえ付けられて、間近で視線を合わせられる。
(や、だ…やだっ…怖いっ……!)
先ほど殺されなかったのは、今この場で嬲り殺しにされるからかもしれない……そう考えて、ツナは恐怖にパニックを起こしていた。