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□籠の鳥
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だから綱吉が国を、ジョットを裏切るなどあり得ないというのに……

「だからお前は甘いのだ。“何も起こらなかった”という事実が、一体誰に分かる?」
「っ……!」

確かに、敵国で何があったのか、それを知るのは綱吉だけだ。それでも……獄寺は、手を強く握り締め俯くことしかできなかった。

どれくらいの間、そうしていただろうか。ジョットからの圧倒的なプレッシャーに、数刻でもかなりの時間が経ったように感じられる。

やがて、

「……まぁ、良い。俺も、あれほどの下臣は他にはそういないと思っている」
「陛、下……?」
「捨てるには惜しい存在だ。特に、今は隣国との抗争で国全体が不安定な状況になっている」

その言葉に、獄寺は弾かれたように顔を上げた。ジョットから罰を与えられて、その任を消されなかった人間などいない。

だから、どうして……と、主人の顔を見た獄寺は僅かに身体を強ばらせた。

何故なら、

「あれには数日後、すぐにでも部隊へ復帰してもらう。これまで通りに、だ。だが……」
「………」
「確実に信用した訳ではない……よって」

ジョットが、今までに見たことのないような、どこか仄暗い笑みを浮かべていて。何かただならぬものを感じ、獄寺は背筋に冷たいものが滑り落ちるのを感じた。

「よって、綱吉が妙な気を起こさないかどうか、副隊長であるお前が監視をしろ」
「っ……!」
「これは命令だ。もしも、綱吉が少しでもそんな行動を起こした時は……分かっているな?」

何故だろうか。何か、知ってはいけないようなことが起こっている気がして、

「っ……は……!」

これ以上聞いてはいけない……逆らうことの許されない主人の言葉に、獄寺はただ頭を垂れ命を受けることしかできなかった。


***


数日後……特殊戦闘部隊専用の訓練場に、綱吉は現れた。
薄茶色の髪に、太陽の光が当たるとオレンジに輝く瞳。まだ十六歳で幼さの残る身体を純白の軍服に包んだ姿は、だが年齢以上の凛としたものを感じさせられる。

ただ……敵国に捕らえられたということがあったからか、細身の身体はより痩せて、表情には暗い翳りのようなものが落ちていた。

「皆、迷惑をかけてすまなかった…」

まだ少し高い声音で、それでいて重みを感じさせられる綱吉の言葉に、隊員達は内心唇を噛み締める。元はと言えば、自分達の失態のせいで綱吉を身の危険にさらしてしまったのだ。
彼が戻ってきたことを喜ぶ反面、自分達の無力さを心底恨んでいた。

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