Main3
□Inside fence
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放課後。ツナは重い足を引きずるようにして教室を後にした。補習を受けるために、理科準備室へと向かったのだ。
(はぁ…やだなぁ……)
ただでさえ、準備室は日当たりが悪くいつも薄暗いし、何の実験に使うか分からない物がたくさん置いているので不気味なのだ。
そんな場所で、あの苦手な教師と二人で補習なんて……気分は重くなるばかりだった。
だが、どんなにゆっくり歩いても、目的の場所へはすぐに着いてしまって。
「………」
見上げれば、そこには“理科準備室”の文字。ここは特別教室ばかりが集まった棟で、それも一番端にあるので放課後はほとんど誰も近付かない。
そのため、辺りはしんとして余計に不安な気持ちになってしまう。
(なるべく早く終わりますように……)
ツナは諦めたようにため息を吐くと、ドアを控え目にノックした。
「失礼します……あれ?」
だが、そろそろとドアを開けて中へ入っても、教師の姿は見当たらくて。まだ来ていないのか、そこはしんと静まり返っていた。
(どうしよう……)
あまり広くない中は、いろんな物が置いてあって余計に狭く感じる。人体模型や、瓶の中に詰められた良く分からない物体など、やはり気味の悪い部屋で一人待つのは何だか心細かった。
そして、とりあえず電気を点けようと、入り口にあるスイッチに手を伸ばした時だった。
「―――沢田」
「っ……!」
すぐ背後から、低い声で呼ばれたのは。驚いて振り返れば、あの覇気のない理科教諭が真後ろに立っていて。
「せ、先生……」
(い、いつの間に……)
今来たのか、それとも中にいたのか分からないが、ツナは思わずたじろいでしまう。教師は気にした様子もなくドアを閉めると、
「ぇ……?」
かちゃりと、ドアの鍵を掛けた。
「ぇ…どうして……」
「こちらへ来なさい」
「っ……」
そして疑問を口にする前に背中を押されて、部屋の中まで連れていかれる。電気は点けていないので、中は薄暗いままだ。
何かがおかしい気がして、ツナは無意識に男から距離を取ろうとした。
だが、
「先生……?」
「何だ…?」
男はツナの細い肩をつかんだまま離そうとしない。そしてツナは、目の前の表情を見て身体を強ばらせた。
常に生気のない、陰鬱な雰囲気の教師。それは今も変わらない。
だが、いつもは輝きのない瞳が……いや、そこだけが、今は異様に輝いているように見えて。