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□A coward
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先に校庭の隅にある手洗い場で汚れを洗い流してから、ツナと炎真は保健室へとやってきた。

「シャマルー……あれ、またいないんだ」

中へ入ると、電気は点いているのに誰もいない。ツナによると、ここの保険医はしょっちゅうフラフラしていて、いないことが多いらしい。

「まぁ、良いや。どうせアイツ、男は診てくれないし」

そう言うと、ツナは炎真を椅子へ座らせて消毒液と絆創膏を用意し始めた。

そんなツナの後ろ姿を眺めながら、

(ツナ君と、二人きり……)

炎真は、これ以上ないほど心臓を脈打たせていた。好きな人と、それも普通ではないただならぬ想いを抱いている人物とこの場に二人だけなのだ。
先ほど沸き上がってきた欲望が、再び自分の中で渦を巻き始めて。

「先に、エンマのをやってあげるね」
「う、ん……」

コットンに消毒液を染み込ませたツナが、炎真の元へしゃがみ込む。

「………」

ツナと二人きりになれることなど、滅多にない。だって彼の周りには、いつもたくさんの人間が集まるから。

だから、

「……待って、ツナ君」

こんなチャンスは、滅多にないのだ。

こんな……

「え、何?」

この純粋で綺麗な心を持つ、愛しい存在を手に入れるチャンスなど。

「エンマ?どうかした?」

跪いた状態で動きを止めたまま、ツナが不思議そうに見上げてくる。そんな、何も知らなさそうな瞳とは対称的に、炎真は暗い色をした瞳で見下ろした。

「消毒液、痛いから嫌だよ」
「ええ?そりゃ、俺も嫌だけど……でも、ちゃんと消毒しなきゃ」
「うん、だからね……」

そこで炎真は、いきなり擦り剥いた足をツナへと差し出して、

「ツナ君が舐めて消毒してほしい」
「え……」

その言葉に、一瞬何を言われたのか分からなかったツナが目をしばたかせた。だが炎真の表情に、そしてその瞳に含む色に困惑したようで。

「え、エンマ…?どういう…」
「そのまんまの意味だよ。ツナ君に、舐めて消毒してほしいんだ」
「ええっ?」

今度こそツナは驚いた。友人にいきなりそんなことを言われれば無理もないが。

「な、何で…そんなの…」
「恥ずかしい?なら、僕が先にしてあげようか?」
「ぇ…ぇっ…?」

まだ混乱するツナに、炎真は立ち上がるとその手から消毒液を取り上げた。適当にそれらを机に置いて、ツナの手をつかむとベッドへ連れていく。

そして、その華奢な身体をベッドの一つへ押し倒した。

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