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□A coward
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休み時間。教室ではツナと獄寺、山本がいつものように談笑していた。何の取り留めもない、クラスメイトとしてごく自然な会話だ。

だが、

「………」

炎真は、やはりその光景をじっとりとした瞳で見つめていた。胸には、苛立ちや言い様のない負の感情を渦巻かせて。

(ツナ君……)

そう、炎真は同級生であり同性であるツナのことが好きなのだ。友人としてではなく、それ以上の存在として。

それも恋愛なんて甘いものではなく、もっと心の奥底で沸き立つような、激しい感情を抱いていて。

そんな想いを抱き始めたのは、一体いつからだろうか。

(僕だけを、見てくれたら良いのに……)

ここ最近は、その想いが特に強くなっていた。
自分だけを見て、自分だけに笑いかけてほしい。他の人間に笑顔を見せないで、触れさせないで、自分だけを……激しい嫉妬や独占欲、ツナへの執着はただならぬほど膨れ上がっていて。

「―――ね、エンマも一緒に行かない?」
「え?」

その時、ツナが炎真の方へ振り返りそんなことを言った。驚く彼に、ふわりとした笑みを向けて。

「……うん、ツナ君が行くなら」
「良かった!じゃあ日曜日だね!」

花が咲いたように表情を輝かせるツナを、

「………」

炎真は、熱を孕んだ瞳でずっと見つめていた。

(もう、我慢できないよ…ツナ君……)

そしてその表情は、先ほどとは違って……暗い笑みを浮かべていた。


***


「わぁっ、ぶふっ…!」
「うわっ!」

午後の体育の授業。

「っ、いたた……だ、大丈夫エンマ!?」
「う、うん…ツナ君は……?」

グラウンドでサッカーの試合をしていたツナと炎真は、転がってきたボールを蹴ろうとして……例のダメダメ体質により二人仲良く派手に転んだ。

「わっ、大変!すごい血が出てるよ!」
「ツナ君こそ……」

痛みに呻きながら起き上がると、二人とも足や腕を擦り剥き出血している。大した怪我ではないが、血が止まるのにしばらくかかりそうだった。

「だ、大丈夫ですか十代目っ!?」
「だ、大丈夫大丈夫。でも保健室行ってくるね」

血相を変えて飛んでくる獄寺にへらりと笑って、ツナはイテテと言いながら立ち上がる。そして、炎真に手を差し伸べた。

「行こう?エンマ」
「う、うん」

その手を握り返して立ち上がれば、照れくさいのかツナが僅かに頬を染める。

そして付き添いに来ようとする獄寺を断って、教師に伝えると……ツナと炎真は、二人で保健室へ向かったのだった。


***

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