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□A coward
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「―――おはよう、エンマ!」
「………!」

朝。眠気や気怠さを我慢する多くの生徒に混じって登校していた赤毛の少年……炎真は、校門を抜けた所で背後から声をかけられた。その柔らかい、透き通るような声音にどきりと心臓が跳ね上がる。

慌てて背後を振り返ると、

「お、おはようツナ君……!」

そこにいた、薄茶色の髪に大きな瞳の少年……ツナに、小さな声で挨拶を返したのだった。

「早く教室行こっ」
「う、うん」

ふわりと笑いかけられて、思わず目をそらしてしまう。その顔は頬だけでなく、耳まで真っ赤だった。

それに気付かないツナは、炎真の隣に並ぶと校舎へ向かって歩き始める。

「今日体育あるよねー。嫌だなぁ」
「………」

取り留めのない話をするツナの横顔を、炎真はドキドキしながら見つめていた。緊張と、喜びの混じった瞳で。

その時、

「おはようございます十代目っ!」
「おーっすツナ!お、古里も一緒か!」
「あっ、おはよー獄寺君、山本!」

賑やかな声が聞こえてきたかと思ったら、見知った二人組がツナと炎真の間に入り込んできた。クラスメイトの獄寺と山本だ。

二人の姿を見ると、ツナはさらに表情を明るくして笑った。そして楽しそうに談笑ながら、校舎へと入っていく。

「………」

その様子を少し後ろで眺めながら、

「ツナ君……」

炎真は、先ほどとは違い少年らしからぬ仄暗い表情でぽつりと呟いたのだった。


***


炎真は、小さいがマフィアの一つであるシモンファミリーのボスだ。数週間前、彼はとあることがきっかけでツナ達ボンゴレファミリーと対立し、それはとんでもない戦いにまで膨れ上がった。
最終的には和解して手を取り合い、事件の元凶だった敵を倒し平和な日常を取り戻すことができたのだが。

ボンゴレに、特にツナに強い憎しみと怒りを抱いていた炎真はそれが間違いだと気付き、ツナとも和解してまた元の仲の良い友人になったはずだった。

だが、

「………」

炎真の表情は深く沈んでいた。元々うつむきがちで、あまり人と接することがない性格だからそのように見えるだけかもしれないが。
だが、その瞳は確実に何か暗いものを秘めていて。

「なーツナ、今度の日曜試合見に来てくれよー」
「試合あるの?行く行く!頑張ってね!」
「この野球馬鹿!何強引に十代目を誘ってやがる!」
「えっと……じゃあ、獄寺君も一緒に行く?」
「はいっ!もちろんです!」

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