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□Tragedy or?
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満月ではないが、空には雲一つなく微かに明るい夜だった。
この鬱蒼と木々が茂る森の中も、葉の隙間から差し込む月の光でぼんやりと照らされている。
そんな中、
「……綺麗な月だねぇ」
もうほとんどの生物が活動を停止する時刻だというのに……普段から誰も近寄らない森の、ある大きな木の下に一人の男がいた。
二十代半ばほどの青年で、暗くても目立つような真っ白な髪に切れ長の瞳。何かの制服なのか白い衣服に身を包んでいる。
にこやかでいて、だが何を考えているのか分からないような雰囲気の男は、月を見上げ何でもなさそうに呟くと……視線をそこから森の奥へと移した。そこに姿を現した人物に、人の良さそうな笑みを向ける。
「こんな素敵な夜に呼び出されるなんて、期待しても良いのかな?綱吉クン♪」
「……白蘭」
それは男と同い年くらいの、だが彼よりも少し若く見える青年だった。柔らかそうな薄茶色の髪に同じ色の瞳。漆黒のスーツを着ているが、小柄で幼い顔立ちはまだ十代なのではないかと思わせる。
だが、凛とした表情にまっすぐな瞳は、年齢以上のものを感じさせられた。
綱吉と呼ばれた青年……イタリアの巨大マフィア、ボンゴレファミリーの十代目ボスである沢田綱吉は、目の前にいる男……ミルフィオーレファミリーのボス、白蘭にどこか固い表情を返す。冗談なのか本気なのか分からない言葉に、若干眉を寄せて。
一方の白蘭は、やはりつかみどころのない笑みを浮かべた。
「だって本当に嬉しいんだよ?普段なかなか会えない君と、こうして二人きりで会えるなんてさ」
「お前を呼び出したのは、世間話をしようと思った訳じゃない」
「へぇ……じゃあ何かな?」
ツナは、面白そうに目を細める白蘭に近付くと、ある一定の距離を置いて止まる。そして、目の前に立つ男をまっすぐに見据えた。
そして、
「……白蘭、これ以上ボンゴレに手を出すのは止めろ」
透き通るような、だが鋭い声音が森の中に響いた。
「………」
有無を言わさない瞳で白蘭を見つめている綱吉。白蘭は、しばらく何も言わなかった。
やがて、
「……やだなぁ、何のこと?」
「とぼけるなよ。ここ最近ボンゴレに関係のある人間に手を出したり、セキュリティシステムに不正にアクセスしているだろう」
ボンゴレとミルフィオーレは同盟ファミリーではない。だが別に敵でも味方でもなく、あまり干渉し合わない関係を築いていた。