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□Enchanters!
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ふわふわの薄茶色の髪に大きな瞳。小柄で制服に着られているような感じはまだ中等部の学生にみえるが、非常に危なげながらも向かっている方向は、どうやら高等部の校舎のようだ。
だが、明らかに箒を上手く扱えていないようで、今にもひっくり返って落ちそうになっている。

そして、

「わわわっ、わぁーっ!ぶつかるぅぅっ!」

バランスを崩したまま、箒がどこかの教室の窓へ突っ込んでいくのが分かって、その少年魔法使い……ツナは悲鳴を上げた。来るであろう衝撃に、とっさに箒にしがみ付いてキツく目を閉じてしまう。

だが、

「わぁぁぁんっ……っ、ぇ……?」

予想していた痛みはいつまで経っても来なくて……急に風の抵抗から解放されたと思ったら、ふわりと身体が浮いた。
次いで、何か温かいものに包まれる。

そして、

「……あー、危なかったなぁ!大丈夫か?ツナ」
「ぇ……?」

すぐ近くで、聞き慣れた誰かの声が聞こえて……ツナは、閉じていた目を恐る恐る開けた。

そこには、

「ぁ……や、山本……!?」
「おー、おはよーツナ」

自分の顔のすぐ近くには、にっかりと笑う男……クラスメイトの山本武がいた。黒髪に爽やかな笑顔の似合うイケメンだ。

さらに、

「お怪我はありませんかツナさん!?ゴラァ山本、いつまで抱いてんだ!」
「ご、獄寺君……!」

そこへ、酷く焦ったような、心配した様子の男子生徒が近付いてきた。銀髪に、こちらも整った顔立ちの男は、同じくクラスメイトの獄寺隼人だ。

「ふ、二人とも何で…あれ、俺……」
「いやぁ、びっくりしたなぁ。ツナ、いきなり突っ込んでくるんだから」

ツナを横抱きにしながら、山本がはははと笑う。

何でも、ツナが窓に激突しそうになった直前、それに気付いた獄寺が魔法の膜のようなものでツナの身体を包んで……浮いたその身体を、山本がキャッチしたらしい。

ようやく事態が飲み込めたツナは、肺が空になるほど息を吐いた。

「っ、ぁぁ〜…!二人とも、本当にありがとう…いつもごめん……」
「いいえっ!これくらい当然のことですから、お気になさらないで下さい!」
「そうそう、気にすんなよな〜」
「テメェはさっさと離れろ!」

何やら怪しい動きをする山本の手を獄寺が叩いて、ツナがようやく地面に降り立つ。まだ足は少しフラフラとしたが。

そして良く見ると、そこはツナ達の教室で……何だかんだ言って遅刻しないで済んだツナは、ホッと息を吐いた。

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