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□Position
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イタリア人と日本人のハーフである彼は、銀色の髪に酷く整った顔立ちをしている。まだ二十代後半という、社長にしては異例の若さだ。
だが、少し鋭い目付きと身にまとう雰囲気は、会社をまとめ上げる実力を持つことを感じさせられた。

(………)

社長が自ら部署を訪れるのは珍しい。自分よりも歳上である部長の男に、引けを取らず堂々と話す姿を、ツナも思わず女性社員と同じように見つめた。

すると、

「ってこらぁ沢田っ!聞いているのか!」
「ひぃぃすみませんんんっ!」

よそ見をしていたのを見咎められて、目の前の男を余計に爆発させてしまう。ツナは、己の愚かさにさらに絶望した。

男の声は良く通る。つまり、社長である獄寺にもツナがこっぴどく怒られている様子が伝わっているだろう。

社長の前で、ダメダメっぷりを発揮してしまったのだ。

「全く、何でお前が我が社に就職できたのか、不思議でならない―――」
「………」

(そう、だよね……)

確かに男でなくても、誰もが疑問に思っているだろう。何故、何をやらせてもダメダメな自分が、こんな一流企業にいるのか。

(………)

その理由を、ツナは知っていた。

そして、

「………」

話を終えたらしい銀髪の若社長は、部署から出る直前……奥のスペースで怒られている新入社員の様子を、僅かに見ていた。


***


ミスの始末書を提出して、今日のうちにやらなければならない作業を終えて会社を出た頃には、日はとっぷりと暮れていた。残業でツナが遅くなるのは、ほぼ日課となっている。

そしてヘトヘトになって帰ってきたマンションは、いくらエリート会社に勤めているとはいえ、新入社員のツナが暮らすには高級すぎる場所だった。だがツナは、フラフラになりながらもカードキーでエントランスを抜けて、ロビーを通りエレベーターに乗り込む。

着いたのは、やはりツナには不釣り合いなほど高級そうな部屋の前だった。それでもツナはインターホンを鳴らした後、やはり鍵を開けて中へ入る。

すると、

「お帰りなさい……ツナさん」

リビングから出てきた誰かが、ツナを玄関まで迎えにきた。それは、低いがツナに対して思いやりの感じられる声で。

「お、お疲れ様です……獄寺社長」

今にも倒れそうになりながらも、ツナは何とか居住まいを直し少し緊張したように言ったのだった。自分を迎えてくれた……ボンゴレ日本支社の最高責任者、獄寺隼人に。

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