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□My darling
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やがて、騒ぎを聞き付けた他の女子生徒達も次々とやってきて……最早、ちょっとやそっとでは収拾がつかない状態になってしまった。

そして、

「………」

その場にぽつんと残されたツナはというと、

「っ、わりぃツナ!やっぱり先に帰っててくれ!後で連絡するから!」
「………」

大勢の生徒の向こうに埋もれてしまった山本にそう言われて、

「……う、うん分かった!じゃあ後でね!」

黄色い歓声に掻き消されないようにそう叫ぶと、くるりと背を向けてカフェテリアを後にしたのだった。

顔を背けた瞬間、

「……むぅ」

先ほどの、拗ねたような表情になりながら。


恋人と同じ大学へ進学して、楽しいキャンパスライフを送るはずだった。
だが実際は、山本は仕事が忙しくて大学に来れない日がたくさんあって。

それはまだ良いのだ。高校卒業直前にモデルの仕事を始めた時から、予想していたことだから。

問題は、

「………」

先ほどの光景が頭に浮かんで、ツナは内心ため息を吐く。

人気モデルなのだから、騒がれるのは当然だし覚悟もしていた。それでも、活躍する彼を応援しようと思っていたのだ。

けれど、

(せっかく、久しぶりに一緒にいられると思ったのに……)

仕事が忙しくてなかなか会えないのはいつものこと。だが、ようやく二人の時間が持てると思っても、やはり山本はどこへ行っても忙しくて。
一緒にいられないのは寂しいし、多くの女子に囲まれている姿を見るのはやっぱり面白くない。

(でも、我慢しなきゃ…応援するって決めたんだから……)

仕事や、お芝居の勉強は楽しいと言っていた山本。それなら、自分は心から応援したいと思う。
自分も、恋人である前に一人のファンなのだから。

だから、

『――悪いツナ!また急に仕事が入ってさ、これから行かないといけないんだ!マジでごめん!』

夕方、ようやく連絡が来た山本からそう言われても、

「っ……そっか、俺はいつでも大丈夫だから!頑張ってね!」

ツナは、努めて明るく返事をしていた。本当はすごくショックだったし、胸がもやっとしたけれど。

『でも、今週は大きな仕事なくて大学も行くからさ……明日は絶対に!』

そんなことを必死に、申し訳なさそうに言われてしまっては、了承するしかないではないか。

(大丈夫…明日、また会えるんだから……)

今日感じた嫉妬や、もやもやした感情を誤魔化すように、ツナは布団に潜り込み眠りに就いたのだった。

楽しみは後にとっておいた方が良い、と言い聞かせて。


***

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