Main3
□A discord
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すると、
「……ク、クハハッ!」
しばらくツナの顔を見下ろしていた骸が、突然愉快げに笑い始めた。思わず、ツナはびくりと肩を跳ねさせてしまう。
「……やはり、君は甘い男ですね。自分のことよりも他人の心配をするなんて」
「………!」
間近で顔を覗き込まれて、ツナはぎゅっと唇を噛んだ。やはり、この男には何を言っても無駄だったのだ、と。
だが、
「まぁ、今は安心しても良いですよ。君とはまだ契約していませんから」
「ぇ……?」
次いで放たれた言葉に、驚いて顔を上げることになる。今、骸は何と言ったのか。
「な…なん、で……?」
一番の目的は、それだったはずなのに。自分を捕まえた今、チャンスはいくらでも……いや、すぐにでも身体を乗っ取ることができるはずなのに。
「なん、で……」
訳が分からないといった様子で、ツナはもう一度同じことを呟く。
その時、
「………」
「っ、ぁ……」
それまで笑みを浮かべていた骸から、一瞬表情というものが消えて……心臓がどくりと脈打った。何を考えているのか分からない瞳に、身体が固まってしまう。
だが、それは本当に一瞬で……瞬きした瞬間には、骸は先ほどの表情に戻っていて。
「それは……意識がない状態で契約しても面白くないでしょう?」
「ぇ……」
「もっと、ぎりぎりまで君を追い詰めて、恐怖に歪む顔が見たいからですよ」
「っ……!」
気のせいだったのか、と思う暇もなく……にやりと笑った骸が、ソファーに横たわるツナを閉じ込めるかのように覆い被さってきた。
どこか不穏な様子に、今度こそ逃げようとした時、
「ひっ……!」
ぞくりとしたものが背筋を走り抜けて、身体に異変が起こった。ぬるりとした何かが手足に絡み付き、思わず悲鳴が上がる。
弾かれるようにして自分の身体を見れば、
「な、なにっ……?」
一体どこから這い出てきたのか、赤黒くぬるぬるとした粘液をまとった、グロテスクな何かが手足に巻き付いていて。その、軟体動物の足のような、触手のような物体に全身から血の気が引いた。
(げ、幻覚……!?)
現実にはあり得ないもの、その独特の気配……明らかに骸の使う幻術で。
だが、
「や、やだっ……!」
見破ったものの、一度術中にはまってしまえば解くのは難しい。それも、ツナは怪我をしてろくに抵抗ができない上に、突然の攻撃にパニックになっていて。
冷静になって、気を確かに持たなければ幻術には勝てないのだ。