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□A discord
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すると、

「……ク、クハハッ!」

しばらくツナの顔を見下ろしていた骸が、突然愉快げに笑い始めた。思わず、ツナはびくりと肩を跳ねさせてしまう。

「……やはり、君は甘い男ですね。自分のことよりも他人の心配をするなんて」
「………!」

間近で顔を覗き込まれて、ツナはぎゅっと唇を噛んだ。やはり、この男には何を言っても無駄だったのだ、と。

だが、

「まぁ、今は安心しても良いですよ。君とはまだ契約していませんから」
「ぇ……?」

次いで放たれた言葉に、驚いて顔を上げることになる。今、骸は何と言ったのか。

「な…なん、で……?」

一番の目的は、それだったはずなのに。自分を捕まえた今、チャンスはいくらでも……いや、すぐにでも身体を乗っ取ることができるはずなのに。

「なん、で……」

訳が分からないといった様子で、ツナはもう一度同じことを呟く。

その時、

「………」
「っ、ぁ……」

それまで笑みを浮かべていた骸から、一瞬表情というものが消えて……心臓がどくりと脈打った。何を考えているのか分からない瞳に、身体が固まってしまう。

だが、それは本当に一瞬で……瞬きした瞬間には、骸は先ほどの表情に戻っていて。

「それは……意識がない状態で契約しても面白くないでしょう?」
「ぇ……」
「もっと、ぎりぎりまで君を追い詰めて、恐怖に歪む顔が見たいからですよ」
「っ……!」

気のせいだったのか、と思う暇もなく……にやりと笑った骸が、ソファーに横たわるツナを閉じ込めるかのように覆い被さってきた。

どこか不穏な様子に、今度こそ逃げようとした時、

「ひっ……!」

ぞくりとしたものが背筋を走り抜けて、身体に異変が起こった。ぬるりとした何かが手足に絡み付き、思わず悲鳴が上がる。

弾かれるようにして自分の身体を見れば、

「な、なにっ……?」

一体どこから這い出てきたのか、赤黒くぬるぬるとした粘液をまとった、グロテスクな何かが手足に巻き付いていて。その、軟体動物の足のような、触手のような物体に全身から血の気が引いた。

(げ、幻覚……!?)

現実にはあり得ないもの、その独特の気配……明らかに骸の使う幻術で。

だが、

「や、やだっ……!」

見破ったものの、一度術中にはまってしまえば解くのは難しい。それも、ツナは怪我をしてろくに抵抗ができない上に、突然の攻撃にパニックになっていて。
冷静になって、気を確かに持たなければ幻術には勝てないのだ。

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