Main3
□Paradise?
3ページ/10ページ
『―――ツナヨシ』
そう……あの落ち着いた、艶のある声で自分を呼んでくれるのだ。そして身体を抱き締めて、頭を優しく撫でてくれて……
「―――吉」
(アラウディさん……)
でも、普段は優しいのに求め合う時は激しくて、済ました顔をしているのにとっても意地悪で……
「―――綱吉?」
「っ、はいアラウディさ……ぁ」
過去で可愛がってくれた彼のことを思い浮かべぽーっとしていたツナは、不意に同じ声音で呼ばれて……思わず、雲雀に向かってそんなこてを言ってしまった。
「………」
「っ……!」
一瞬で部屋の中がしんと……いや、空気が凍り付き温度が急激に下がったような気がする。口をつぐんだ雲雀がすっと目を細めたのを見て、ツナは内心悲鳴を上げた。
「ゃ、あのっ…これは……!」
(お、俺の大バカ者―――っ!)
よりにもよって、本人の前で堂々と他人と間違うなんて。それも何故か雲雀が敵視している、過去で出会った人物と。
だが、必死に弁解しようとしても余計に悪化させてしまう気がして。
「じ、じゃあ俺っ…職員室へ行ってきまぁすっ…!」
不自然なまでに明るく言うと、ツナは書類を持って立ち上がり、猛ダッシュで応接室を出ようとした。
つまり、逃げることにしたのだ。
だが、そうは問屋が卸すはずもなく、
「わぁっ!?」
走りだした瞬間に身体がふわりと浮いて、気付いた時にはソファーの上に転がっていた。雲雀に首根っこを捕まれ放り投げられたのだ。
「ぃっ、た…ひ、ばりさ……?」
鼻をしたたかに打ち付け涙目になっていると、身体をひっくり返されて仰向けにされる。
「っ……!」
同時に雲雀が覆い被さってきて……その、目を細め口端を吊り上げて笑う姿に、ツナは失神するかと思うほど恐怖したのだった。
薄らと笑っているのに、かなり怒っているのが分かって余計に恐ろしい。
「……綱吉」
「ひぃっ…は、はいっ…!」
「数日前に抱いたばかりだから、手加減しようと様子を見ていたけど……」
あの雲雀が手加減…ということは、抱くつもりはあったのだろうか。自分の身体を心配してくれるなんて何て優しい……ツナは、かなり現実逃避をしていた。
だが、
「でも、手加減なんて君には必要なかったんだね」
「っ……!」
「覚悟しなよ?綱吉」
「っっ……!」
あの時と同じ、容赦なく獲物をねじ伏せる瞳に、恐ろしいと思いつつも期待にぞくりとしてしまうツナは……全く懲りていなかった。