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□白の軛
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だから、
(俺は…もう……)
決めたのだ。白蘭から離れることを。
それが、どんなことを意味するのかも知らないで。
***
放課後。迎えの高級車の後部座席で揺られながら、ツナは小さく息を吐いた。
(父様…いつ帰ってくるんだろう……)
これからのことは決めた。それは、白蘭には秘密にしなければいけないことだ。
そして、それはツナ一人では到底叶わないことで……頼れるのは自分の父親しかいない。
だが、ツナ達の父親は巨大企業のトップで、世界中を飛び回っている存在で。家に帰ってくるなど、滅多にない。
(早く、会いたいな……)
不安と焦りで気持ちが落ち着かない。また白蘭にばれてしまう前に、話を聞いてもらわなければ……。
そのうちに屋敷へ着くと、ツナはため息を吐きながら車を降りた。また、この窮屈な家へ帰ってきたのだ、と。
だがその時、
「ぇ……?」
広い庭の向こうにたくさん停まっている高級車の中に、普段は滅多に見ることのないものが一台停まっていた。それは、いつも父親が使うお気に入りの車で。
(っ、もしかして……!)
それを見た瞬間、ツナの心臓が大きく跳ね上がる。思わず、ドアを開けてくれた運転手に詰め寄った。
「っ、あのっ…父様が、父様が帰ってるんですかっ?」
「え?ええ、つい先ほどお帰りになられたばかりで……また夕方には出られるそうですが」
「っ……!」
いても立ってもいられず、ツナは家の中へ駆け込んだ。使用人達の機械的な挨拶に返す余裕もなく、近くにいた執事に父親の居場所を尋ねる。
書斎にいると言われて、急いでそちらへ向かった。
今一番会いたかった人物が、偶然にも帰ってきたのだ。今のツナが頼れる、唯一の人物が。
白蘭は、今日の帰りは少し遅くなると言っていた。つまり、チャンスは今しかない。
「っ、父様…!お帰り、なさい…!」
居候の身で、疲れているところを押し掛け怒られるかと思ったが……白蘭以外で自分を可愛がってくれる父親は、笑顔でツナを迎えた。その笑みに、ツナは嬉しくなる。
「父様…お願いが、あるの……」
ツナが決めたのは、進学先のことだった。
自分はもうすぐ三年生。そろそろ、受験する高校を決めても良い時期だ。
そこで考えたのは、地元から離れた、どこかの寮の備わった学校へ入学すること。寮へ入ってしまえば、白蘭と一緒に過ごすこともほとんどない。
だから、他人と接するなという言い付けを守ることもないのだ。