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□A liar
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そして、
(あ、そうだ……)
今のうちに宿題の準備をしておこう……と、ツナが自分の鞄を開いた時だった。
「あれ……?」
中身を見て、ふと疑問を抱いたのは。
「どうかしましたか?十代目」
自分のコーヒーと、ツナのオレンジジュースを入れたグラスを持って戻ってきた獄寺が不思議そうに尋ねる。
ツナは、ごそごそと鞄を漁りながら、
「おかしいなぁ……どうして無いんだろう」
「何が無いんです?」
「体操服……確かに入れたと思ったんだけど」
服を入れていた袋と、汗を拭いたタオルはある。だが、シャツとハーフパンツが無いのだ。
「教室に忘れてきちゃったのかなぁ……」
「ひょっとしたら更衣室かもしれませんよ。明日、見に行ってみましょうか」
「うーん、そうだね……」
でも母さんに叱られちゃうなぁ……と少し落ち込むツナに、獄寺は苦笑しながらオレンジジュースを差し出した。
「どうぞ、十代目」
「うん、ありがとう」
仕方ない、母親にはちゃんと謝ろう……と気を取り直して、今は早く宿題を済ませてしまうことにする。そしてツナは、貰ったジュースを飲み始めた。
その様子を、獄寺はじっと見つめていた。
「………」
先ほどとは違う、仄暗い笑みを浮かべながら。
***
静まり返ったリビングの中で。
「………」
獄寺隼人は、胸が酷く高鳴るのを感じていた。
目の前には、自分が慕って止まない人物がいる。ローテーブルに広げられた宿題の上に腕と頭を乗せて、規則正しい寝息を立てるツナが。
先ほどまで一緒に宿題をやっていたツナは、急な眠気を訴えて……ほどなく、気を失うように眠ってしまったのだ。
「十代目……」
「ん……」
獄寺が軽く肩を揺らし耳元で囁いても、ツナは擽ったそうな吐息を漏らすだけで起きる気配はない。すぐにでも床に崩れ落ちそうなほど、深い眠りに就いていた。
(まぁ、起きる訳ないよな……相当強い薬を盛ったんだから)
心の中でそう呟くと、獄寺はツナを抱き起こして、軽々とソファーへ運んだ。ゆっくりと細い身体を横たえて、そのあどけない寝顔を舐めるように眺める。
ツナが急に眠ってしまったのは、獄寺が原因だった。先ほど出したジュースのグラスに、強力な睡眠薬を入れていたのだ。
一度効けば、しばらくの間強い衝撃を与えても起きないほどの。
何故、ツナを慕う彼がそんなことをしたのか。
「……まさか、こんなに早く貴方に触れることができるなんて思いませんでしたよ」