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□会いたくて
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ツナに会いに行くなど言える訳がない。言えば自分がとんでもない目に遭わされる。

何故なら、ツナに想いを抱いているのはスクアーロだけではないからだ。ボスであるザンザスも、他の幹部の人間も……この少年に関わった者なら、少なからず彼に惹かれているだろう。

だから、そんなツナと恋人同士になったと知られたら……いつも以上に血の雨が降るに違いない。

大体、この休暇を手に入れるだけでもかなりの苦労を費やしたのだ。ただでさえ忙しい上に、トップを始め荒くれ者だらけのヴァリアーでは日々怒号や凶器が飛び交い、そこらを破壊しまくって(それは自分も同じなのだが)……その後始末やら何やらで、全く時間が取れないのだから。

だが、ツナに会えない日々はもう限界で……ほとんど無理やりに休暇をもぎ取ったスクアーロは、飛び出すようにイタリアを経ったのだ。今頃アジトは、とんでもないことになっているかもしれない。

だが、

「………」

自分の隣でにこにこしているツナを見れば、そんなことはどうでも良くなってしまうスクアーロだった。

だから、今はイかれた仲間のことなど忘れて、恋人との時間を大切にしなければ……と、今度は側にある何かの菓子店が目に入る。

「それより、あれは何だぁ?」
「あぁ、あれは羊羮っていう和菓子で……さつまいもが入ってるんだけど、ここじゃ有名なお店なんだよ」

丁寧に教えてくれるツナ。その様子に、スクアーロの口元も緩んだ。

「ヨーカンか……試しに喰ってみるかな」
「あ、じゃあ俺も……買ってくるから、スクアーロはそこで待ってて」

言われた通り店の横手にある飲食のスペースに行けば、すぐにツナが件の商品を買って持ってくる。ばら売りされてすぐに食べられる芋羊羹と、ツナはサツマイモのソフトクリームにしたらしい。

礼を言って受け取り、噛り付けば口の中に上品な甘味が広がった。

「美味しい?」
「ん、あぁ……やっぱり日本のドルチェは外国のとは全然違うな」

溶けるように甘いのに、しつこくないというか、上品というか……早くも完食しそうなスクアーロである。

その時、

「っ……!」

そこで不意にツナを見て、危うく喉が詰まりそうになった。

何故なら、

「んー、冷たくておいしー」

ツナが、幸せそうにソフトクリームを頬張っていたからだ。小さくて赤い舌の動きに、あらぬ想像をしてしまって。

「……ん、スクアーロも食べる?」
「は……お、おぉ…」

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