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□Alteration
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一体何をしに来たのか、その時のツナは呆気に取られていたのだが。

だがそれ以来、ザンザスは時々沢田家を訪れるようになった。やはり何をするでもなく、ツナが宿題をしたりリボーンに絞られたりするのを黙って見ているだけだが。
沈黙に耐え切れず話し掛ければ「あ゙?」だの「チッ」だの「ウゼェ」だのと返してくるので非常に恐ろしい。

だが、

(でも、何か…ちょっと慣れてきた、かも……)

威圧感は変わらないが、だんだんザンザスが側にいても違和感がなくなってきたというか……むしろ、静かだし少し落ち着くとまで感じるようになってきた。何というか、躾の行き届いた大型犬みたいで……

(って!そんなこと言ったら確実に殺される!)

心の中でうっかり呟いた失言に、ツナは一人で身体を震わせたのだった。

「ツナ〜、悪いけどお使いに行ってきてくれない?」

そこへ、一階から母親の明るい声。

馴染むといえば、母親の奈々はいち早くザンザスを受け入れていた。
彼が初めてツナの家を訪れた時、この年齢も離れ明らかに堅気の人間じゃなさそうな男を「あらぁ、つっ君のお友達?」とナチュラルに家へ上げたのだ。その上お茶やお菓子を出して、普通に話しかけるというかなりの強者だ。

今日も、ザンザスに晩ご飯を食べてもらおうと一人分多く作るつもりだろう。

部屋で二人でじっとしているよりは、外へ出た方が気が楽かもしれない……「はぁい」と返事をして、ツナは立ち上がった。
だが勢い余って足がもつれ、その場で倒れそうになる。

「わわわっ―――ぐぇっ!」

派手に転ぶと身構えれば、その前に身体が宙に浮いた。というか、猫のように首根っこをつかまれてしまった。

恐る恐る見上げれば、悪の大王みたいな顔をしたザンザスが、片手で軽々とツナを持ち上げていて。

「あ、ありがとう……」
「……フン」

何を考えているのか分からない表情のザンザスに、ツナはお礼を言うと頬を染めた。
本当は優しいのかもしれない、と思うと何だか嬉しくて、照れてしまったから。


***


また一人で部屋に残しておくのも不安なので、ツナはザンザスと一緒に買い物へ出かけた。だが、ただでさえでかい上に目立つ格好をしているので、せめて上のジャケットだけでも脱いでもらうように頼んで。
一睨みされたが、彼は言う通りにしてくれた。

静かにすぐ後ろを着いてくるザンザスに、大型犬の散歩……などと再び恐ろしいことを考えたツナだったが、決して口には出さない。

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