Main3

□Alteration
1ページ/9ページ



「………」
「……た、だいまー……」

学校から疲れて家へ帰ってきたツナは、自室のドアを開けて一瞬固まった後……か細い声でそう言った。何故なら、そこには本来いるはずのない人物がいて、しかもその人物の発する鋭くて重々しい雰囲気に部屋が満たされていたからだ。

ツナが、冷や汗をかきながらへらりと(かなり引きつっていたが)愛想笑いをしても、その人物はにこりともしない。むしろ、射殺さんばかりの眼光でこちらを睨み付けてくる。
漆黒の短い髪に、ベッドに腰をかけていても分かるほどすらりとした長身。細身だが鍛えられた、しなやかな筋肉の付いた身体を、やはり漆黒の制服のようなものに包んでいる。一見すると、全身真っ黒の男だ。

だが、その中でも一際鋭い光を放つ瞳は血のような赤で、そんなものに睨まれた日には生きた心地がしないだろう。

それは、イタリアにある巨大マフィア、ボンゴレファミリー直属の特殊暗殺部隊ヴァリアーのボス……ザンザスだった。

「ざ、ザンザス……日本に、来てたんだ……?」
「………」
「任務?それとも…休暇、とか……?」
「………」
「………」

(……頼むから何とか言ってよぉぉぉぉっ!)

疑問を投げ掛けても答えようとはせずに、それどころか凄まじいオーラを飛ばしてくる暴君に、ツナは心の中で悲鳴を上げたのだった。


***


ボンゴレ十代目の座とボンゴレリングを巡って、ツナ達とザンザス率いるヴァリアーの人間が死闘を繰り広げたのは、ほんの数ヶ月前。何とか勝利したツナ達は、平和な日常へと戻ったはずだった。

だが、傷もようやく癒え平穏な毎日が再び始まってしばらくした後、ツナは驚愕することになる。

いるのだ。何故か。ある日のこと、あのザンザスが自分の部屋に。
驚きすぎて思考がフリーズした後、すぐにツナは戦慄した。ザンザスがまた自分の命を、リングを狙ってきたのではないか、と。

だがそれも一瞬だった。何故なら彼からは、突き刺さるような鋭い視線やオーラが飛んできたが、こちらに攻撃してくるような気配は感じられなかったから。

雰囲気が柔らかくなったとか、丸くなったとかではない。相変わらず、大魔王のようなザンザスだ。

だがツナは分かるのだ。このザンザスはもう大丈夫だ、と。何が大丈夫なのかははっきりと分からないのだが。

それから彼は、何をするでも何かを言うでもなくじっとツナを見て(というか睨み付けて)、いつの間にかふらりと帰っていったのだった。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ