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□Eat a lot!
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「今ね、お菓子を作ってるところなんだ!ほら、骸ってチョコレート好きだろ?」
「っ、は……?」
骸が大のチョコレート好きなのは本当だ。ツナがお菓子作りをしているのも納得できた。
だが、骸は怪訝な表情をすると、
「君……ちゃんと食べられるモノを作れるんですか?」
「なぁっ、酷いっ…!」
ショックを受けるツナだが、何せ彼は何をやらせてもダメダメというとんでもない特技を持っているのだ。第一、骸はツナが料理できるということも知らないし、しているところも見たことがない。
不安になるのは当たり前だろう。
「だ、大丈夫だって!ちゃんとレシピ通りにやってるし、簡単なやつ選んだんだから!」
「………」
「とにかく任せておいて!骸は部屋で待っててね!」
まだ疑わしそうな骸に必死で力説すると、ツナはその背中をぐいぐい押して、彼を自室に押し込んだのだった。
“絶対に覗くな”と不気味な台詞を残して出ていって、骸は一人で部屋に残されてしまう。
(本当に、大丈夫なんでしょうね……)
台所の方から、何かを落とす音や壊れる音、そして「わぁぁっ!」とか「ひぇぇっ!」とかいう悲鳴が聞こえてきて、骸は落ち着かない時間を過ごす羽目になったのだった。
***
それから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
「骸〜っ、お待たせ〜!」
台所でのどったんばったんが止んだかと思うと、そこから明るい声が聞こえてきた。こちらに来い、ということらしい。
「やれやれ……」
一体何を食べさせられるのか。手作りのお菓子は嬉しいのだが、味と身体に無害であるかは怪しい訳で……複雑な気分だ。
せめて食べられるモノであってくれ、と骸は切に願いながらリビングのドアを開けた。
そこには、
「じゃーん!」
チョコレートがあった。骸の好きな、紛れもなく美味しそうなチョコレートが。
向こうの台所でボールや泡立て器、食器が散乱しているのは良い。得体の知れないモノが出来上がらなかったのだから。
ただし、
「……あの、これは…それで完成なんですか?」
「え、そうだよ?」
テーブルには、小さなホットプレートの上に耐熱性の深い容器が二つ置いてあり、そこに液体上のチョコレートが入っていた。
一つは普通のミルクチョコ、もう一つはホワイトチョコだろう。その他には何もない。
え、それってまだ作りかけの、途中のモノじゃないの?と骸が思うのも無理はなかった。