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□Princess and...
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(もう、ジョットは俺のことを……)
その日の夜遅く……なかなか寝付けなくて、ツナはジョットの帰りを待ちながらベッドの上で膝を抱えていた。
ジョットは、もう自分のことを好きではないのではないか……そう思うと、目の前が真っ暗になるのを感じる。
元の時代には帰れない。ジョットに必要とされなくなれば、もう本当にここには自分の居場所はない……いや、始めから自分の居場所などなかったのではないか、と。
「………」
じんわりと目頭に浮かんだモノを、ツナはもう止めることができなかった。
***
辺りが暗く静まり返り、すでに日付も変わった頃。
「……帰ったのか、ジョット」
「ああ……ツナヨシは、もう眠ったか?」
屋敷の重厚な扉が開かれて、漆黒のマントに身を包んだジョットが帰ってきた。少し疲れた様子の表情は、その顔立ちもあって艶やかな憂いを帯びている。
彼を玄関で出迎えたGは、それには答えずに、
「お前も気付いていると思うが、ツナヨシの様子が……」
「……分かっている」
そう、ジョットもツナの異変には気付いていた。一番近くにいるのだから、当然なのだが。
ツナの元気がなくなっていったのは、数日前……ジョットが仕事で留守をしている時に、Gと……そしてその後、屋敷を訪れたコザァートと会ってからだ。
それからというもの、ツナは良くぼーっとしたり、何かを考え込むようになった。今では、明らかに表情に明るさがない。
「俺が、何か気に触ることでも言っちまったんだろうか……?」
「いや、お前は悪くない。いつかはこういう時が来ると思っていた」
ジョットは、始めから分かっていたのだ。ツナが、自分達とどこか違うということを。この時代とは、この世界とは違う所から来たのかもしれない、と。
それでも、
「俺の望みは……一つだけだ」
「ジョット……」
「だが……全ては、ツナヨシが決めるだろう」
そう言って笑う姿は少し寂しげで、だがその瞳には揺るがない気持ちが現れていた。
***
ツナは、ずっとベッドに蹲ったままだった。ひょっとしたら、このままジョットは帰ってこないのでは……そう考えると、さらに胸が締め付けられる。
その時、
「っ……!」
寝室の向こうの部屋……その扉が静かに開く音がして、ツナはびくりと肩を跳ねさせた。恐らく、ジョットが帰ってきたのだろう。
安心したが、自分は今泣いているのだとツナは慌てて涙を拭った。