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□Princess and...
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すっかり日が落ちて、辺りが静かな闇に包まれる時刻。
深い森の奥にある、闇の中でも月の光でぼんやりと明るく浮び上がる巨大な屋敷。その最上階にある部屋のバルコニーで。
「………」
穏やかな夜風に当たりぼんやりと空を見上げながら、少年……ツナは、無意識にため息を吐いていた。透き通るようなハニーブラウンの瞳は、どこか寂しげに空を映している。
どれくらい、そうしているのだろうか。やがて、薄らと開かれていた小さな唇から、
「……みんな」
ぽつりと、誰にも聞こえないほどの小さな声が零れ落ちた。
誤って十年バズーカに当たり、未来へ行くはずが何故かかなり過去の時代に遡ってしまったツナ。そこでジョットを始め、ボンゴレファミリーの初代メンバーと出会って、彼らに愛される日々が続いていた。
いつ元の時代に戻れるのか、ちゃんと帰れるのか不安だったが、ジョット達に世話を焼いてもらい、可愛がってもらって……戸惑いながらも、少しずつ心地好く感じる生活に身を委ねていた。
だがここ数日、一向に帰れないことへの不安と、家族や友人に会えない寂しさが急に押し寄せてきて。今までは、いつかきっと帰れるだろうと信じて、あまり考えないようにしていたのだが。
それが一度大切な家族や仲間達のことを深く考えてしまうと、その想いが一気に溢れてきて。
(みんなに…会いたいよぉ……)
ツナは、自分の身体を抱いてうつむいた。
ジョット達は優しい。自分を心から愛してくれる。
けれど、自分は本当はこの時代の人間じゃない……そう考えたら、急に足が地に着かないような、不安定な感覚に襲われて。
自分の居場所はここではないのだ、と思い知らされて。
そして、もし一生帰れなかったら……そう考えると、目の前が真っ暗になりそうになるのだった。
その時、
「……ツナヨシ」
「っ……!」
不意に背後で人の気配がして、耳に心地好い、透き通るような綺麗な声が響いた。
驚いて振り返れば、
「こんな所にいたのか」
「ジョット……」
そこには、男にしては綺麗すぎる青年が立っていた。月の光を浴びて煌めく金色の髪と瞳、神掛かった美貌にどこか荘厳な雰囲気をまとう若い男。
ボンゴレファミリー初代ボス、ジョットだ。
「どうかしたのか?」
「う、ううん…ちょっと、眠れなくて……」
優しく抱き締められて、ツナは頬を染めながらも慌てて答える。ジョットには、悩んでいることを知られたくない。