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□Sense of distance
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「わぁぁぁんっ、遅刻するぅぅっ……!」
爽やかな朝に、ドタバタと慌ただしい音と悲鳴のような声が響く。どこかの高校の制服に必死で着替えながら、沢田綱吉……ツナは、指定の鞄をつかむと玄関へ猛ダッシュした。
「あらあらつっ君、朝ご飯はどうするの?」
「もう食べてる時間なんてないよぉっ!行ってきます!」
台所から声を掛けてくる母親にそう返して、もたつきつつも靴を履く。転びそうになりながら、ツナは玄関のドアを開けた。
すると、
「おせーぞ、ダメツナ」
そこには、ツナと同じ制服を着た男子生徒がいた。だが、すらりとした長身に漆黒の髪、切れ長の瞳に酷く整った顔立ちは日本人離れをしていて、あまり高校生には見えない。
「リボーン!」
それは、ツナの隣の家に住む同級生の、そして幼なじみであるリボーンだった。彼は日本人とイタリア人のハーフだが、幼少の頃からこの並盛町に住んでいるのだ。
「相変わらずヒデー格好だな。さっさと行くぞ」
「ぁっ、待って……!」
柔らかい薄茶色の髪を寝癖であちこちに跳ねさせ、制服も少し乱れているツナに飽きれて言うと、リボーンはスタスタと歩き始めた。慌てて、その後を追うツナ。
大人びた容姿と雰囲気で高校生には見えないリボーンだが、ツナは逆にまだ中学生に見られるほど小柄で、幼い顔立ちをしていて……この対照的な二人が一緒にいると、かなり不思議な感じがする。
「ま、待って…ネクタイ、が……!」
足の長さが違うため、油断しているとすぐに置いていかれてしまう。ちょこちょこと必死で後ろを着いていきながら……ツナはネクタイを締めようと苦戦していた。最低限の衣服を身に付けるのが精一杯で、ネクタイを締める余裕などなかったのだ。
だが元々不器用で、普段何もない時に締めるのも苦労するのに、歩きながらという不安定な状態で結べるはずもなく……案の定、上手くできないツナは泣きそうになっていた。
すると、
「……全く、仕方ねぇな」
「ぁっ……!」
深いため息を吐いたリボーンが振り返って、もたもたするツナのネクタイを手慣れた様子で結び始めた。彼がツナのネクタイを結んでやるのは、実は朝のお馴染みの光景で、ツナはされるがままになっている。
「ほら」
「あ、ありがとう……」
あっという間に、胸元には綺麗なネクタイがあって……だが、ツナは素直にお礼を言いつつも、複雑な表情をでうつむいてしまった。