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□A desire
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(本当に…会長、だったのかな……)
確かに会長だと思った。だけど暗かったし、ほとんど横顔しか見ていないし……何より雰囲気や性格が全く違っていたから、今となっては見間違いだったのかもしれないと思うのだ。
(人違い……?)
何となくもやもやしたモノを感じながら、ツナは無意識に火照った身体を冷まそうとしていた。
***
それから数日経って。生徒会長を見かける度に、ツナはやはり人違いだったのではと思う。何故なら、その表情は変わらず穏やかで優しそうで、どう見てもいつもの会長だったから。
ただ、まだ生々しい光景を思い出してしまうので、姿を見る度に逃げるように離れるのだが。
(やっぱり、俺の思い過ごしだったんだ)
何故かホッとして、だがやはりしばらくはまともに顔を見れないだろうなぁ、とツナは気楽に思っていた。
だが……それからまだ数日も経たない、ある日の放課後。
「……はぁぁ、今日も遅くなっちゃった……」
すっかり日が暮れた後、ツナはまた校舎の廊下を一人で歩いていた。今日も、暗くなるまで補習を受けていたのだ。
(早く帰ろう……)
空腹を感じながら、階段を降りて玄関に向かおうとする。
だがその時、
「……ねぇ、君」
「っ、ぇ……?」
突然、背後から声をかけられて、ツナは驚いて肩を跳ねさせた。もう他の生徒など、誰も残っていないと思っていたから。
そして、
「………!」
振り返って背後にいた人物を見た瞬間、ツナはさらに驚愕することになった。
何故なら、
「補習かい?遅くまでご苦労様だったね」
「会、長……?」
そこにいたのは、あの憧れの生徒会長だったからだ。初めて面と向かって話したことや、この間のことが頭にあって、ツナは緊張に固まってしまう。
男は、穏やかな笑みを浮かべてツナを見下ろしていた。
「俺も、生徒会の仕事があって今まで残ってたんだ」
「そう、なんですか……」
「そうそう、君に用があったんだよ……一年生の、沢田綱吉君」
「ぇっ……」
全生徒の代表が、ただの一年生に何の用なのだろうか。というか、どうして名前まで……
まさか、と一つの不安が頭をよぎる。
だが、男の口から発せられたのは、意外な言葉だった。
「落とし物を拾ったんだ、君の」
「落とし物……?」
「そう。生徒会室にあるから、取りにおいでよ」
「ぁ……」
そう言って、男はさっと踵を返してしまう。
ツナは、咄嗟に後を追うしかなかった。
***