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□A desire
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背後でそう呟いた友人の言葉に、ツナは気が付かなかった。

こちらに向けられる、ある一つの視線のことも。

(やっぱり、この間のは…俺の見間違い、なのかな……)

ツナはここ数日、先ほどの生徒会長のことばかりが頭に浮かんでいた。

何故なら……数日前に、あるとんでもない光景を見てしまったから。


***


数日前の放課後、ツナは日がとっぷりと暮れるまで補習を受けていた。
校内なら誰もが知っているというくらい、勉強や運動がダメダメなツナ。そこそこ有名な進学校であるここに入学できたのが、本当に奇跡としか思えないほど。

だから、勉強に着いていけないツナには、ほぼ毎日のように補習があった。寮が校舎のすぐ隣にあり何の危険もないので、教師は時間を気にせず課題ができるまで居残りをさせる。
この日も、夜までみっちりと絞られていたのだ。

「うぅ…お腹空いた……」

頭を使いすぎてヘトヘトになり、お腹をきゅぅきゅぅと鳴らしながら、ツナは暗く静まり返った校舎の廊下を歩いていた。早く寮に帰って休みたい、と思いながら。

すると、

「………?」

廊下の一番奥……補習があったのは特別教室のある建物だったのだが、そこには生徒会が使う部屋もあって……その生徒会室から、何か物音が聞こえたのだ。そして、微かに人の気配も。

(生徒会の先輩…まだ残ってるんだ……)

この学校で行事が大いに盛り上がるのは、生徒会役員が主体となっていろいろ考え、引っ張ってくれるからだったりする。次のイベントに向けて、遅くまで会議をしているのだとツナは思った。

(会長も、いるのかな……)

実は、入学式で新入生に挨拶をする姿を見た時から、ツナは生徒会長に憧れを抱いていた。格好良くて何でも完璧にこなす、自分とは正反対の存在。そして、誰にでも優しい笑みを向ける人柄に。

だから、

「………」

生徒会室を覗いてみたい、覗いてみようと思ったのは、本当にただの出来心。自分のような一般の生徒は、恐らく卒業するまで入ることはできないのだから。

会長はいるだろうか、と少しドキドキしながら静かに部屋の前まで近付くと、ツナはこっそりドアの隙間から中を覗いた。中を少し見たら、すぐに帰ろうと思って。

だが、

「………!」

中を覗いたツナは、そのまま固まってしまった。思考が、一瞬で停止してしまったのだ。

何故なら、

「ぁっ、ぁぁっ…ぁぁんっ…!」

そこには、とんでもない光景が広がっていたから。

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