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「………!」

ツナは、ただ信じられない気持ちで目の前にいる人物を見つめた。

あまりにも衝撃が大きくて、頭が追い付いていかない。

「……なん、で……」

何とか絞りだした声は、酷く擦れていて。微かに震えているのが、自分でも良く分かった。

「………」

その人物は何も言わない。ただ、じっとツナを見つめて……そして、不意ににやりと笑った。

「っ……!」

その仄暗い笑みに、そして熱を帯び、言い様のない激しい何かが含まれた視線に……ツナは、思わず身体を震わせたのだった。

(なん、で……)

もう一度尋ねようとした言葉は声にならなくて、心の中でそう呟きながら。


***


ツナは、イタリアの巨大マフィア、ボンゴレファミリーの十代目だ。ボスに就任後、故郷である日本からイタリアに移って、毎日忙しい生活を送っていた。

膨大な仕事の量に追われ、また命の危険にさらされることも多々ある。だが、優秀な仲間達に支えられて、何とかこれまでやってきたのだ。

そして、今ツナの目の前にいる男は、ボンゴレと同盟を結んでいるとあるファミリーのボスだった。

ツナよりも少し年上だが、その男も若くしてマフィアのボスになった人間だ。頭脳明晰でカリスマ性があって、部下からの信頼も厚い。
あらゆる能力が高く、また容姿も整っていて、女なら誰もが見惚れるような顔立ちをしていた。

同盟ファミリーということで、ツナは以前からこの男と良く会っていた。冷静沈着で一見冷たく感じられる男だが、ツナには穏やかな笑みを見せ親しい関係を築いている。
ツナも、男といるのはどこか心地よくて……今では、互いの部下を側に置かずに、二人だけで話すことも良くあった。それも仕事の話だけではなく、とりとめのない世間話などをして。

だから、男のアジトでゆっくりお茶でもしないかと誘われた時、ツナは快く了承したのだ。何の疑いも持たずに。

それが何故、こんなことになってしまったのか。


***


「………!」

ふと目が覚めると、ツナはキングサイズのベッドの上にいた。
素早く辺りを確認すれば、どこかの寝室で。自分の姿は、上はスーツのジャケットとネクタイを外されて、カッターシャツだけになっている。下は、靴下を脱がされベルトを引き抜かれただけで、他には何も変わったところはないようだが。

だが、両手を手錠で頭上に戒められ、さらに鎖でヘッドに繋がれていて……非常事態であるということは一瞬で分かった。

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