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□Sweet dream
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だから、身の回りの世話をするため良く側にいるジョットに、ツナはいつも気が気でなくて。
「……これが答えです。お分りになられましたか?」
「う、うん……」
その日の夜も、ツナは自分の部屋でジョットに勉強を教わっていた。元々勉強が苦手なツナが、何とか有名私立中学校に通えるのは、ジョットが丁寧に勉強を見てくれるからなのだ。
だが、それも最近ではなかなか頭に入らなくて。
「っ……!」
勉強机の前に座るツナの後ろから、抱き締めるようにして教えるジョット。背中に感じる温もり、何かの香水なのか、微かに甘い薫りが鼻をくすぐって……何よりも、端正な顔が自分のすぐ隣にあって。
「綱吉様?」
「ひゃ……!」
俯いてしまったツナを心配するかのように、ジョットが耳元で尋ねてくる。だが、吐息が耳に当たったツナは、ぞくりとした感覚に飛び上がった。
「大丈夫ですか?お加減でも…」
「うう、ん……でも、ちょっと疲れちゃった…」
咄嗟についた嘘だが、顔を赤くした状態では本当に具合が悪そうに見えたのかもしれない。
それを聞くと、ジョットは頬を緩めて、
「たくさん勉強しましたものね。今日はもうお休みになられてはいかがですか」
「っ…う、うん…そうする……」
優しく頭を撫でられて、やはりツナはろくに話すこともできず俯いてしまったのだった。
(どうしよう…このままじゃ……)
だからツナは、ジョットがどんな表情でツナを見ているのか、全く知らなかった。
***
それから何日か経った、まだ早いある晩のこと。
(はぁ……)
ツナは、明かりを消した部屋の、ベッドの中で丸くなりながらぐるぐると考え込んでいた。気分が優れないからと言って、早くにベッドに入ったのだが、なかなか眠れない。
それは、まだ早い時間だからではなく……頭の中に浮かぶ、あの優秀な執事のせいだった。
(何で、こんなにもドキドキするんだろう……)
ジョットと初めて出会ったのは、小学校低学年の頃。人見知りが激しく父親の後ろに隠れていたツナを、ジョットは今と変わらない、綺麗で優しげな笑みで手を差し伸べてきた。
『これからよろしくお願いします。綱吉様』
キラキラと光る金色の髪と瞳、その顔立ちに……幼かったツナは、ただ綺麗だと思った。
緊張していたのはほんの一瞬で、優しく穏やかなジョットの雰囲気に、ツナはすぐに懐いた。それからは、いつも彼の側にくっ付いて離れなかったものだ。