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□Sweet dream
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だが、
「さぁ、着替えましょうか」
「っ…じ、自分でできるよ……!」
最近、ツナは酷く困惑している。
今の生活に不満がある訳ではない。そうではないのだが、
「ですが、早くしないと遅刻してしまいますから……手伝って差し上げます」
「っ……!」
パジャマを脱ごうとするツナをベッドに座らせて、ジョットが手袋をはめた手で一つ一つボタンを外していく。あっさりと上を脱がされて、今度は制服のカッターシャツを着せられながら、ツナは何もできないでいた。
目の前で、優雅に微笑み世話を焼く美麗の執事に、やはり頬を赤くして。
誰もが優しくて優秀な、沢田家の使用人達。中でも、イタリアから来たこのジョットという青年は、その若さでツナの世話役や勉強係、話し相手になったりと、ツナ専属の執事を任されているほど優秀な男だった。
だがツナは最近、ジョットといると酷く困惑してしまう。この綺麗な顔に見つめられて、優しく微笑まれると……胸がドキドキして、良く分からない気持ちになるのだ。
ジョットは自分の執事で、同じ男だというのに。
その時、
「ひゃ、ぅっ…!」
カッターシャツのボタンを留めていたジョットの指が、不意にツナの胸に当たって……その小さな突起を掠めた瞬間、ツナは女の子のような高い声を上げてしまった。くすぐったいような、言い様のない感覚に襲われたのだ。
「綱吉様?どうかされましたか?」
「う、ううんっ…ちょっと、くすぐったかっただけ……」
不思議そうな顔をするジョットに、ツナは真っ赤になりながら慌てて首を振る。
(何やってるんだよ俺っ…こんな…女の子みたいな声出して……!)
近頃のツナは、ジョットにこうやって軽く触れられただけで、身体がびっくりしたように跳ねてしまう。小さい頃から、着替えを手伝ってもらうのは当たり前だったのに。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
ようやく着替えを終えて、豪華な朝食をやや急いで食べたツナは、ジョットに見送られ送迎の高級車に乗り込んだのだった。
車が見えなくなるまで頭を下げ続ける執事を、一度もまともに見ることができないまま。
ジョットはとても綺麗な顔をしているから、微笑みかけられれば照れてしまうのは、男でもおかしくないかもしれない。
でもこれは…自分の場合は、そんな程度ではなく……この気持ちが何なのか、ツナには分からなくて、酷く困惑してしまうのだった。