Main2
□One side
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というか、そもそも戦闘能力の高いツナに襲い掛かろうというのも、無謀な話だったのだが。
だが、せめてお互いの距離は縮めたくて、獄寺はなるべくツナに引っ付いて勉強を教えることにした。ツナは集中していて、そんな獄寺に気付いていないのだが……なかなか悲しい。
(十代目は頑張ってらっしゃるんだ…我慢我慢……)
その、真っ直ぐな視線で問題を睨む様子とか、ほっそりとした首筋にムラッときたりするのだが……何とか理性を総動員して、寸前で押し止める。
ツナは苦戦しているらしく、身を乗り出すようにして問題を解いているので、獄寺がどんな様子でツナを見ているかは知らないだろう。やはり悲しい。
すると、
(あ……)
ツナが少し前屈みになっているので、それを斜め後ろから眺めていた獄寺は、彼がノートに書く公式が間違っていることに気付いた。
「十代目、そこは……」
それを教えようとして、顔を近付ける。
その時、
「っ、ぁ……!」
「へ?」
突然、ツナがびくりと肩を跳ねさせて……今まで聞いたことのないような高い声を出した。
驚いて固まってしまった獄寺に、彼は片方の耳を慌てて押さえながら、
「っ、す…すまない……耳が、くすぐったくて……」
「あ…す、すみません……」
どうやら獄寺が顔を近付けた時に、耳に息がかかったらしい。
だが、問題はそんなことではなくて。
「じゅ、十代目……耳が弱かったんですね」
まさか、普段はクールなツナから、そんな声や仕草が出るとは思わなくて、獄寺はついドキドキしながらそんなことを言ってしまう。しかも恥ずかしかったのか、ツナは頬を染めて、
「み、耳なんて…誰でも弱いだろう……?」
「っ……!」
視線をそらして、焦ったように言う。そんな、ツナの意外な一面を見て、
「そ、そう…でしょうか……?」
「ぇ……、っ…!」
ほぼ無意識にそう言うと、獄寺は再び耳元に顔を近付けていた。そして、フッと軽く息を吹き掛ける。
「ふ、ぁっ…!?な、何す……」
「ほら、十代目は特に弱いような気がします」
「そ、そんな…んんっ…!」
顔を近付けたまま囁くように言えば、ツナはびく、びくりと反応してから咄嗟に口を手で覆う。そんな行動も、表情も、獄寺は今まで見たことなどない。
そして、
「っ、も…やめて、くれ……!」
「っ……!」
耳まで真っ赤にして、眉を困ったように下げ、僅かに涙目になっているツナに、
「十…代目……!」
獄寺は、やりすぎたかと焦ることはなく、
(や、べぇ……!)