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□おあいこ
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だが、

(ひ、ひぇぇ……!)

ツナは、雲雀が教えてくれることなど、ろくに頭の中に入れることができなかった。
何故なら、近距離で座っているため顔もとても近いし、身体が触れ合うのは当たり前で。それだけで、ツナは何も考えられなくなってしまうのだ。

さらに恋人なのだから、ただ距離が近いだけではなく、

「やっと終わったね。下校時刻までかかるかと思ったよ」
「っ……!」

隣で話す雲雀の声が、勉強を教える時とは少し違うものになる。恋人であるツナにしか分からない変化だが。

「綱吉」
「ぁ……!」

それは低く艶のある、どこか甘さを含んだ声。どきりと心臓を跳ねさせたツナは、雲雀の手が頬に触れ顔をそちらに向かせたことで、さらに息を詰めた。

「っ……!」

雲雀が、まっすぐな目で見つめてくる。その顔が、少しずつ近付いてきて。

もしかしなくても、これは……

(っ、やっぱり…キ……!)

キスされるのだ、とツナは身構えるように目と口をキツく閉じた。

だが、お互いの吐息がもう少しで触れ合いそうになった時、

「っっっ……!」

ツナは、再び爆発したのだった。

いきなり勢い良く立ち上がると、不自然なくらい明るい声で、

「お、お茶…!俺、お茶いれてきますね!」
「そう?ならよろしく」
「は、はいっ…!」

バタバタと、慌ただしく給湯室へ駆けていく。雲雀の顔を、見ることもできなかった。

(また…やっちゃった……)

姿が見えない所まで来て、ツナは上がった呼吸を落ち着けようとする。

それらしい雰囲気になればなるほど、ツナは恥ずかしさに耐えられなくなる。これまでに、何度も雲雀の側から逃げ出してしまった。

だから、ツナは雲雀とまだキスさえもしていないのだ。

(どうしよう…これじゃ……)

雲雀は何も言わない。いつもと変わらない様子で接してくれる。
だが、いくら何でもこれだけ避けてしまっては、いつか嫌われてしまいそうで……ツナはどんどん気持ちが沈んでいく。

だから、ツナは知らなかった。

雲雀が、いつもツナが顔を背けたり、側から離れていくのを、どんな表情で見ているのかを。


***


そんなこんなで、雲雀と付き合い始めて数週間ほど経ったある日。

ツナは、雲雀の家へ来るように誘われた。といっても、やはり脅迫されたと言った方が正しいのかもしれないが。

「ふわ、ぁ……!」

今まで雲雀の私生活は謎めいていて、どんな家なのか想像もできなかったが……案内されて着いたのは、とんでもない豪邸だった。

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