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□おあいこ
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「……今日はあまり忙しくないから、放課後応接室に来なよ」
「は、はい……わっ!?」

静かにそう言った雲雀を見上げようとしたため、前や足下をちゃんと見ていなかったツナは、道に落ちていた小石に蹴躓いてしまった。

「っ……!」

身体がぐらりと傾いて、転んでしまう、と目をキツくつむった瞬間、

「……っと」
「っ、ぁ……!」

別の強い力で支えられたので、ツナは何とか転ばずに済んだ。ゆっくりと目を開ければ、

「全く、相変わらず鈍臭いね」
「っ、ひ…雲雀さん……!」

雲雀の腕が、ツナの身体をしっかりと抱き留めていて。そして呆れたような、だが端正な顔が間近にあって、

「っ……!」

ツナの思考は、完全にフリーズしてしまった。

さらに、

「ほら、早く来なよ」
「ぇ、ぁっ……!」

身体を起こされて、雲雀はツナの手をつかむとスタスタと歩きだした。繋いだ手の感触や、その温もりに、

「っっっ……!」

ツナの限界は、ピークに達したのだった。

「ぁっ、ぁぁぁあのっ…!」
「何?」
「っ…み、見て下さい!あそこにっ…へ、ヘンな鳥が……!」

繋いでいた手を慌てて放すと、突然そんなことを言って明後日の方向を指差す。声は、完全に裏返っていた。

「どこ?」
「ぇっ!?えーと、今確かに…あ、あっちでしょうか…!」

そして、雲雀から顔を背けるようにして、小走りでその場から離れる。

ツナの顔は真っ赤だった。胸も、あり得ないくらい激しく脈打っている。

(ど、どうしよう…!今…て、手を……!)

触れ合った方の手をぎゅ、と握り締めて、ツナはパニックになっていた。

そう、ツナは極度の恥ずかしがり屋らしい。それも、相手が好きな人ならば特に。
付き合う前は、一定の距離を保っていたからまだ大丈夫だった。だが、恋人同士になり一気に距離が近くなると、どうして良いのか分からなくなって。

雲雀が側にいるだけで、顔がリンゴのように真っ赤になって、あり得ないくらい心臓が脈打つ。身体がカチコチに固まって、上手く喋れなくなってしまう。

だから、今のように身体が触れ合ったり、手を繋ぐだけでもツナにとっては大変なことなのだ。


そして、それは放課後でも……。

「……で、答えが出る。分かった?」
「は、はぃ……」

静かな応接室で、ソファーに二人並んで座りながら、ツナは雲雀に宿題を見てもらっていた。彼は良く、勉強が苦手どころか壊滅的なツナにいろいろと教えてあげるのだ。

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