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□レンアイ受難曲!
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隣町にあるそのテーマパークへは、電車を何回か乗り継いで行くことになる。駅からは、専用のシャトルバスだ。

「……そういえば先輩、その傷はどうしたんですか?」
「えっ……?」

そこそこに混んでいる列車のドア付近に立ちながら、ふとツナが心配そうに見上げてくるので、剣介は一瞬ぎくりとした。
その頬には、いくつか絆創膏が貼ってあって、良く見るとそれ以外にも細かい傷が付いている。

「あー、えっと……ぶ、部活で付いたんだよ」
「そうなんですか?無理しないで頑張って下さいね」
「お、おぅ……!」

(い、言える訳ねぇよなぁ……)

心配してくれるツナに喜びつつも、剣介は一人ひやひやとする。

(この傷が、ツナの取り巻き達に付けられたものだとか……!)

そう……ツナと恋人同士になった翌日から、剣介の本当の受難は始まった。ツナに近付くだけでも血相を変えて妨害(というか撃退)してきた取り巻き達が、ましてや付き合うなど言語道断で。

隙ある毎にダイナマイトが飛んできたり、日本刀や拳、トンファーが飛んできたり、妙な幻覚を見せられたり……それはもう、嫌がらせのレベルを越えていた。それも、全部ツナの知らない所で行われるので質が悪い。

だから剣介は、登下校の時、屋上でお弁当タイムの時、その他にもいろいろ……絶えず複数の殺気を受け、危険と隣り合わせの生活を送っていたのだった。

(何か、マジで映画に出てくるマフィアとのドンパチみたいだな……)

げっそりとしながら、内心こっそりとため息を吐く彼は……なかなか鋭い。

それでも、ぼろぼろでヘトヘトになっているはずの剣介が持ち堪えているのは、

「………」

ちらりと視線を向ければ、目が合ったツナがにっこりと笑う。

(可愛い……!)

受難に耐えることができるのは、この愛しい存在が側にいるからだった。





ちなみに、その原因である取り巻き達は、しっかり隣の車両に乗り込んで、絶えず剣介を睨んでいたりするのだが。


***


一時間ほどでやってきたそのテーマパークは、数年前にできたばかりの人気スポットだった。休日だからか、アーケードまでにもたくさんの人間がいて賑やかだ。

「わぁーすごい!」
「さすがに混んでるなぁ」

入場券を買うために、二人で列の最後尾に並ぶ。

ツナは、巨大で派手なアーケードを見上げ目を輝かせながら、

「楽しみだなぁ……!」
「普段は、あんまりこういう所には来ないのか?」
「あ、いえそういう訳じゃないんですけど」

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