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□Doctor's fee
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言うまでもなく、その日の学校は散々だった。さすがに体育は見学したが、少し動くだけで全身が痛むので、普通の授業を受けるだけでもかなり辛い。
そして学校から帰ると、しばらく家でゴロゴロして、日が落ちる直前に家を出た。
なるべく診療時間終了間際の、患者の少ない時に行きたかったのだ。
並盛駅前の、大通りから少し外れた場所にある接骨院。辺りはすでに薄暗く人通りも少なくて、明かりのついたその建物だけがぼんやりと浮いているように見えた。
ガラス張りの入り口からこっそり覗いてみると、やはりこんな平日の夜に来る患者はいないようで……中に人気は無く、しんとしていた。
(でもなぁ……)
いざ来てみたのは良いものの、やはり入るのは躊躇ってしまう。いくら他に患者がいないとはいえ、初めて来る施設に一人で入るのは何だか勇気がいるのだ。
(やっぱり、止めとこうかな……)
しばらく店の前で迷っていたが、入る決心をすることができなくて……ツナは、元来た道を引き返そうとした。
その時、
「……患者さんですか?」
「っ……!」
いきなり入り口の自動ドアが開いて、中にいた医師らしき人間が顔を覗かせた。どうやら、ツナが店の前で様子をうかがっていることに気付いたらしい。
だが、ツナはその人物の顔を見ると、大きく目を見開いて固まった。
(この人…すごく格好良い……!)
その男は、まだ二十代半ばくらいの青年で……切れ長の瞳にノンフレームの眼鏡を掛け、酷く整った顔立ちをしていた。すらりとした長身で、しなやかな体躯を白く清潔な白衣に包んでいる。
この人が、奈々の言っていた若先生だろう。実際に見て、ツナは納得した。確かに、これは男でも一瞬見惚れてしまいそうな男前だ。
ぽーっとしたまま見上げるツナに、その男は少し身を屈めて、
「まだ中学生くらいだね?どこか悪いのかい?」
「ぇっ…あ、あの…ひどい、筋肉痛で……」
「筋肉痛か……じゃあ先生がちょっと診てあげよう。中へどうぞ」
「ぇ、ぁ…は、ぃ……」
つい症状を話して、ツナは促されるまま中へ入ってしまった。どうしようと思ったが、今さら出ていくのも変だろう。
それに、入るのを躊躇っていたのを、向こうから声を掛けてくれたのだ。身体が痛いのは事実だし、治療をしてもらえば良い……と、ツナは自分を納得させることにした。
すると、ツナが診療所の中に入った後、男は店の入り口に立て看板を置いた。そこには「本日は終了しました」と書いていて。