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□Doctor's fee
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朝。それは例えまだ眠くても、昨日の疲れが残っていても、爽やかで気持ちの良い一日の始まり。

そのはずなのだが、

「っっ…いっ、たぁぁ……!」

“沢田”と書かれた表札のある家の二階からは、呻き声のようなものが聞こえていた。声の主は、この家の長男である沢田綱吉……ツナだ。

彼はパジャマ姿で、自室のベッドの上で蹲っていた。理由は、全身を襲う激痛……節々の痛みや、筋肉痛だった。

「っ、いたぃ…よぉぉ……!」

何故こうなったのか、原因ははっきりと分かる。ここ連日、リボーンによる修行で身体を酷使してきたからだ。
元々体力も無い、運動神経も無いツナの身体が、そんなものに耐えられるはずもなかった。

「まぁまぁ、ツッ君大丈夫?」
「あの程度で身体を痛めるとは、情けねぇ奴だな」
「あのなぁっ、誰のせいだと思って……あだぁっ!」

全く悪びれる気配のない家庭教師に抗議しようとして、だが身体を動かせばびりびりと電流のような痛みが走る。少し動くだけで、涙が出そうになるほど痛くて辛い。

「ぅぅぅ……!」
「そんなに辛いなら、夕方接骨院にでも行ったらどうかしら」
「ぇぇっ?やだよそんな…!」

心配してくれる母親の提案に、だがツナは即座に却下した。そして、何とかベッドの上に身体を起こす。

「接骨院って、おじいちゃんやおばあちゃんが行く所じゃん!恥ずかしいよ!」
「何言ってるのよ。父さんみたいな人も行くし、若い人達だってたくさん行くんだから」
「で、でも……」

今まで行ったことがなかったから、接骨院という場所は年配の人が行く、というイメージがあったのだ。自分のような子どもが行って、若いくせにと笑われはしないだろうかと余計な心配をしてしまう。

「ほら、駅前にある接骨院、なかなか評判が良いのよ。それに、最近若い先生が一人入ってきてね、それがもうとっても格好良い人で!」
「はぁっ!?何だよそれ、行きたいのは母さんの方じゃん!」

人気があるのは女性だけだろう。同じ男なのに、男前だからと言って何が嬉しいのか。

まだ渋るツナに、奈々はずいと顔を近付けると、

「とにかく、今日学校から帰ったら一度行ってみなさい!良いわね?」
「仕方ねーな、今日の修行は特別に休みにしてやるぞ」
「っ……むぅぅ」

接骨院は嫌だが、修行がないのは嬉しい。

こうして今日の放課後、ツナは全身筋肉痛の治療を受けに行くことになったのだった。

そこで、どんな目に遭うかも知らないで。


***

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