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□スパルタ!
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(も、もしかして…俺、コロネロ教官に見放された……!?)
あまりのダメっぷりに、怒りを通り越して呆れられたのかもしれない。
元々苦痛に思っていた訓練なので、見放されても喜ぶところなのかもしれないが……ツナは、他の生徒に怒号を飛ばすコロネロの後ろ姿を見て、大きなショックを受けたのだった。
***
それから一日、二日と経って、今日……とうとう、最後の訓練が終わった。
「皆、一週間ご苦労だったな――」
ツナはやはりヘトヘトになった状態で、他の訓練生と一緒にコロネロの話を聞いている。
(………)
明日になれば、家に帰れる……すごく嬉しいはずなのに、ツナの気持ちは何故か沈んでいた。
この数日で、コロネロはほとんどツナを叱らなくなった。力尽きても、銃弾を明後日の方向へ飛ばしても……しかも今日などは、一度も目を合わせてくれなくて。
(やっぱり、嫌われちゃったの…かな……)
当然かもしれない。コロネロは軍のエリートで、自分は一般市民の、しかもまるで何もできない子どもで……少しも進歩せず、他の訓練生の足手まといばかりになれば、嫌われるのももっともだ。
(はぁ……)
考えれば考えるほど、気持ちは深く沈んでいく。
実は、ツナはコロネロのことが好きだった。始めは怖くて怖くて仕方がなかったが、自分と正反対の強い、格好良い彼に憧れて、惹かれていって。
だから、彼に嫌われてしまったのは酷く悲しくて、辛い。
(明日には、もう会えなくなるんだ……)
だが、それで良いのだろう。彼と自分とでは、住む世界が違いすぎるのだから。
「訓練は今日で終わりだが、この国の男であるからには……」
(良いんだ…もう……)
ツナ達の前で話すコロネロの姿が、さらに遠くに見える。少しも手の届かない場所に。
「常日頃から己の鍛練を怠らずに……」
(コロネロ教官……)
やがて、その声も遠くなっていって。
その瞬間、
「あっ…おい……!?」
隣で誰かの驚いたような声がしたかと思うと、
(ぁ……)
霞んでいた視界が真っ暗になって……ツナは、そこで意識を失った。
「沢田……!?」
最後に、コロネロの声が聞こえたような気がした。
***
「ん……」
薄らと目を開けると、真っ白な天井が映った。そして、独特の薬の匂いが鼻を突く。
(あ、れ…俺、どうしたんだっけ……?)
確か、訓練が終わって……思い出そうとしても、まだ意識がぼんやりして思い出せない。