Main2

□スパルタ!
3ページ/8ページ



(も、もしかして…俺、コロネロ教官に見放された……!?)

あまりのダメっぷりに、怒りを通り越して呆れられたのかもしれない。

元々苦痛に思っていた訓練なので、見放されても喜ぶところなのかもしれないが……ツナは、他の生徒に怒号を飛ばすコロネロの後ろ姿を見て、大きなショックを受けたのだった。


***


それから一日、二日と経って、今日……とうとう、最後の訓練が終わった。

「皆、一週間ご苦労だったな――」

ツナはやはりヘトヘトになった状態で、他の訓練生と一緒にコロネロの話を聞いている。

(………)

明日になれば、家に帰れる……すごく嬉しいはずなのに、ツナの気持ちは何故か沈んでいた。


この数日で、コロネロはほとんどツナを叱らなくなった。力尽きても、銃弾を明後日の方向へ飛ばしても……しかも今日などは、一度も目を合わせてくれなくて。

(やっぱり、嫌われちゃったの…かな……)

当然かもしれない。コロネロは軍のエリートで、自分は一般市民の、しかもまるで何もできない子どもで……少しも進歩せず、他の訓練生の足手まといばかりになれば、嫌われるのももっともだ。

(はぁ……)

考えれば考えるほど、気持ちは深く沈んでいく。

実は、ツナはコロネロのことが好きだった。始めは怖くて怖くて仕方がなかったが、自分と正反対の強い、格好良い彼に憧れて、惹かれていって。

だから、彼に嫌われてしまったのは酷く悲しくて、辛い。

(明日には、もう会えなくなるんだ……)

だが、それで良いのだろう。彼と自分とでは、住む世界が違いすぎるのだから。

「訓練は今日で終わりだが、この国の男であるからには……」

(良いんだ…もう……)

ツナ達の前で話すコロネロの姿が、さらに遠くに見える。少しも手の届かない場所に。

「常日頃から己の鍛練を怠らずに……」

(コロネロ教官……)

やがて、その声も遠くなっていって。

その瞬間、

「あっ…おい……!?」

隣で誰かの驚いたような声がしたかと思うと、

(ぁ……)

霞んでいた視界が真っ暗になって……ツナは、そこで意識を失った。

「沢田……!?」

最後に、コロネロの声が聞こえたような気がした。


***


「ん……」

薄らと目を開けると、真っ白な天井が映った。そして、独特の薬の匂いが鼻を突く。

(あ、れ…俺、どうしたんだっけ……?)

確か、訓練が終わって……思い出そうとしても、まだ意識がぼんやりして思い出せない。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ