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□背伸び
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別に、ただ抱いてほしいと思ったわけじゃない。だって自分は、まだそういうことは良く分からないし、やっぱり怖いから。
そうじゃなくて、了平が自分をそういう対象として見てくれているのか、そういう想いを少しでも抱いてくれているのか、それを期待していたのだ。
だから、
「よし、じゃあそろそろ寝るか!」
「っ、ぁ……!」
まだ、希望を持ちたかったのかもしれない。すがり付きたかったのかもしれない。
「あ、あのっ……!」
「い、一緒にベッドで寝ませんか……!?」
気が付けば、ツナはそう叫んでいた。
「………」
「……、はっ……!」
そこで、はっと我に返る。自分は今、一体何を言ってしまったのか。
見ると、了平も驚いたようで、目を丸くしていて。
「ぇっ、ぁっ…その、ほらっ…も、もっとお話したいな、なんて…!そ、その方がお泊まり会っぽいし……!」
もはや何を言っているのかも分からない。ツナはテンパりながら、必死で誤魔化そうとしていた。
(ぁぁぁ俺っ…何てこと言って……!)
すると、
「……そうだな!せっかくなのだから、一緒に寝るか!」
「っ、ぇ……!?」
しばらく黙っていた了平がそう言って、自分の枕をベッドに置いたので、ツナはさらに驚くことになる。了平は普段と変わりない様子で、ベッドの片側へ入った。
そして、もう片側を手で叩きながら、
「沢田はこっちだぞ!」
「っ……!」
ツナは改めて、自分の失言がとんでもないことだと知ることになる。
***
「懐かしいな!昔は京子と良くこうやって寝たものだ」
「そ、そそそそうですか……」
電気を消して、薄暗くなった部屋の中で。
(あああ俺のばかばかばかっ……!)
了平のベッドに二人並んで寝ながら、ツナはこれ以上ないほどかっちんこっちんになっていた。
先ほどよりも近付いた距離。薄暗いのでお互いの顔はあまり見えないが、了平の息遣いがすぐ近くで感じられて……なぜ一緒に寝ようなんて言ったのか、ツナは激しく後悔した。
(どうしよう…どうしよう……!)
激しく脈打つ心臓の音が、静まり返った中で聞かれはしないかと、余計にドキドキしてしまう。意識しないようにすればするほど、了平の存在をリアルに感じてしまって。
すると、先ほどよりも返事の少なくなったツナを不思議に思ったのか、
「沢田?もう寝たのか?」
「っ、ぁ……!」
確かめようとして触れられた了平の手に、ツナは大きく身体を跳ねさせてしまった。