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□背伸び
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そして、部屋中をさ迷っていた視線は、ある一つの場所でピタリと止まった。

奥にある、了平のベッドで。

(も、もしかしたら…今日、あそこで……)

「っっっ……!」

そこまで考えた瞬間、ツナはぼふっ!と音を立てそうなほど勢い良く赤面した。想像だけで、頭の中がパンクしてしまったらしい。

頭をぶんぶんと振って、思わず床をゴロゴロと転がり回る。

(なっ、何考えてんだよ俺っ…そ、そんなエッチなこと…ダメだってぇっ……!)

と思いつつも、胸のドキドキは止まらないし、頭の中は再びいろんな想像……むしろ妄想で忙しなく回っている。

だが、そこでふと我に返ると、

(でも……お兄さんも、俺と同じようなこと、考えてるのかな……)

何しろ、ボクシング命で年中熱く燃えている男だ。恋愛などに、ましてや恋人との営みのことなど、少しも考えているようには見えなかった。

(で、でも…家に恋人を呼ぶってことは…いや、でもお兄さんだし……いやいや、やっぱりお兄さんも男だし……)

それに……と、ツナは頬を染めたまま今度はもじもじし始める。

付き合うことになったのは、了平からツナに告白してきたからだ。あの、いつも熱血でパワフルな了平が、少し照れたように、だが真剣な表情で想いを伝えてきたことは、一生忘れない。

「………」

それでもツナは、時々不安になることがある。

何故なら、

(だって俺達…キスもまだなんだから―――)


***


「待たせたな!」
「い、いえ……!」

ほどなく了平がジュースを運んできたので、ツナは慌てて赤くなった顔を誤魔化すことになる。

それからは、二人でとりとめもない話をした。学校のこと、ツナの賑やかな家族のこと、了平のボクシングのことなど。
こんなふうに話をしている時が、ツナは一番心地よかった。恋人というよりも、友人、仲間としての感覚の方が自然にいられるから。

だが、やはり付き合っている以上、いわゆるそういう雰囲気が訪れることはあるもので。

「……っていうことがあったんです!」
「ははっ、そうか!それは良くやったな!」
「っ……!」

屈託なく笑って、了平が頭を撫でてくるので、ツナはどきりと心臓を跳ねさせた。
付き合い始めてから、ふとしたスキンシップに、あり得ないくらい緊張してしまう。

それに、話すのに夢中で気付かなかったが、いつの間にかかなり了平に顔を近付けていて……意識した瞬間、一気に頬が熱くなった。

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