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□狂愛
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しばらくして、

「ああ…今日も愛らしい……」
「お姿を拝見できるなんて、今日は何て幸せな日なんだ……」

その少年の後ろ姿を、その場にいる男達は見えなくなってもずっと見つめていた。
何かに取り付かれたような、うっとりとした表情で。

「………」

そんな男達を見て、青年……獄寺隼人は、仄暗く笑ったのだった。


***


―――一体何を行っているのか分からない、怪しい教団がある―――そう、周りの人々は口々に囁き合う。


とある町の一角に、他の住宅や店、施設に混じって、一際異彩を放つ大きな建物があった。

建物自体は二、三階建てであまり高くはないが、その面積はかなり広い。石造りのそれは台形のような、少し変わった形をしており、一見すると何の建物か分からなかった。
窓も所々に小さなものがいくつかあるだけだし、さらにその建物は周りを高い塀で囲まれているので、敷地の中がどうなっているかも不明だ。

唯一、正面の出入口から見える一階の正面玄関はガラス張りなのだが、それも特殊な物を使っているからか、中の照明が暗い色をしているからか……内部は薄暗くて、ほとんど何も見えなかった。

そして妙なことには……そこには、日々多くの男達が出入りしているということだ。まだ大学生くらいの青年もいれば、還暦をとっくに過ぎたであろう者もいる。スーツ姿の男もいれば、私服、作業着、和服など……年齢も見た目も、職業も皆ばらばらだった。

男達は特に変わった様子もなく、自然な足取りで中へ入っていってはしばらく出てこない。出てきたかと思っても、入った時と変わりはなく……ただ、どこか生き生きとしているような、そんな印象が感じられて。

敷地の出入口に、標識や看板のような物はない。だが、建物の周りを囲む塀の前には、所々に駐車禁止を促す立て看板が置いてあった。


その文章の、最後に印された名は―――“ボンゴレ教団”。

そこでその近隣に住む住人や人々は、これは何かの宗教団体なのだと認識して、だが怪しいのであまり側には近付かないようにしていた。

何故ならそこは、大人の男達が出入りする謎の教団。一体どんな宗教なのか、何を信仰し、どんな活動を行っているのかも不明なのだ。

今問題になっているカルト集団なのではないか。
宗教団体と見せかけて、本当は暴力団などと繋がっているのではないか。

様々な憶測が飛び交う中、人々の間で特に気になっている噂が一つあった。

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