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□狂愛
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そして、

「っ、おお……!」
「ああ……!」

その何者かが入ってきた瞬間、その人物の姿が露になった瞬間……今までぴくりとも動かなかった大勢の男達の間に、大きなどよめきが広がった。恍惚としたような、感嘆のため息のような声が零れる。

「ツナ様……!」
「綱吉様だ……!」

そして、次の瞬間には誰もがそう口々に漏らして、一斉にその場に膝を着いていた。若い者も年配の者までも、そこにいた人間が全員。

現れた人間は、まだ十代前半くらいの、小柄な男の子だった。
ふわふわした薄茶色の髪に、同じ色の大きな瞳。ふっくらとした頬は薄いピンク色で、滑らかな肌は白い。

小柄で華奢な身体で淡い紅色の単衣を羽織り、裾が長いのか後ろを少し引きずってしまっている。

少年は、祭壇に立つ男を見ると、大きな瞳を輝かせた。

「はやとっ、きいて!」

満面の笑顔は純粋で、無邪気そのもので。祭壇まで小走りに駆けていくと、その青年の身体に思い切り抱き付いた。

「ツナさん……どうされました?」

“はやと”と呼ばれた青年はすぐに膝を着いて、少年と視線を合わせる。その目付きは先ほどの鋭いものとは全く違い、酷く優しげで。口調も穏やかで、柔らかいものになっていた。

「あのねったけしがね!今日は時間があるから、ツナといっぱいあそんでくれるって!」
「そうですか、それは良かったですね」

そして何故か、十代前半くらいに見える少年の声音や口調、仕草はとても幼なかった。まるで、まだ五歳にも満たない幼子のような。

そこへ、

「こーらツナ。獄寺はまだ仕事中なんだから、邪魔しちゃダメだろ?」

少年が入ってきたドアから、同じくスーツ姿の、黒髪に長身の男が現れた。人の良さそうな笑みを浮かべた、爽やかな好青年だ。
ツナと呼ばれた少年の元へ向かうと、その頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「だって、はやくしらせたかったんだもん!……あれっ、人がいっぱい!」

そこでようやく、少年は部屋の中に大勢の人間がいることに気が付いたようで、

「みんな何してるの?ねぇはやと!この人たち、ツナとあそんでくれるの?」
「いえ、残念ですが……でも、多くの方からたくさんお菓子を頂きましたから、後で一緒に食べましょうね?」
「ほんと?やったぁ!」
「な、だから向こうで良い子で待ってような?ツナ」
「うんっ!」

嬉しそうな、花が咲いたような笑顔で、少年は“たけし”と呼ばれた青年に手を引かれ部屋を出ていく。

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