Main2
□Dancing dolls
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ふと涙を止めて、不安そうに尋ねてくるツナに、骸は意識を引き戻される。
「僕はクロームの身体を通じて、ずっとこのアジトの場所を探っていたんです」
だが、場所は特定できても辺りには強力な幻術が掛かっていて、骸でも容易に近付くことはできなかった。それがほんの少し前、急に建物を覆っていた霧が晴れて、ここまで来ることができたのだという。
何故、急に術が解けたのかは分からない。だが骸は、妙な違和感を覚えていた。
こうもあっさり侵入できて、捕まっていたツナと接触できるなんて。何か裏があるのでは、何かの罠ではないかと思うのは当然だろう。
「とにかく、さっさとここを出ますよ。他のボンゴレの連中も、この近くにいますから」
「っ、うん……!」
そしてさらに妙なことに、この場所には自分とツナ以外、誰もいないようで。敵の気配が、全く感じられないのも妙なのだ。
(変ですね……)
不自然しか残らないが、とにかくツナを連れ出そうと、骸は踵を返した。
(良かった……)
一方のツナは、骸に出会えたことで心底安堵していた。ここから抜け出すことができる。もう犯されることも、手酷く嬲られることもない。
何より、ずっと会いたかった仲間にようやく会えるのだ。
だから、ツナはすっかり忘れてしまっていた。自分がなぜ、デイモンに逆らうことができなかったのかを。
自分の身体のことを。
「……っ!」
すたすたと歩きだした骸の後を追おうと、慌てて立ち上がったツナは……ぞくりと背筋に走った悪寒に、その場で固まった。
(ぁっ……!)
次いで、どくどくと心臓が激しく脈打ち始める。この感覚は……。
(う、そ……!)
恐怖で全身から血の気が退いていく。身体ががたがたと震えだす。
なぜ忘れていたのか。
自分の身体は、もはや自分のものではないということを。
(だ、め……!)
何とか身体を保とうとしても、もう遅い。頭の芯がくらりとすると同時に、前方にいる骸の姿がぼやけて見えた。
「?何をしているんです、早く……」
先を歩いていた骸が、怪訝そうに後ろを振り返ろうとして、
「骸っ、逃げて……!」
「!?」
その瞬間、ツナの悲鳴のような声が響いた。
「っ……!」
そして気付いた時には、骸はその場に押し倒されていた。仰向けになった身体にツナが乗っかり、両腕をつかんで押さえ付ける。
その華奢な身体からは想像できないような強い力に、骸は少なからず驚いた。