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□小鳥
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この至高の存在を思えばこそ、綱吉はどんなに辱められ貶められようと、これまで生き長らえてこれたのだ。

なぜ敵国で囚われの身になった自分が、主であるかの人を目の前にしているのか……そこまで考えて、ようやく理解した。
ここは、ボンゴレ王国なのだ。不思議と懐かしい感覚がしたは、母国の空気や匂いに触れていたからで。

捕虜の身になった自分が、どうやってここへ返されたのか、何があったのか分からない。だが綱吉は、ずっと焦がれていた自分の主が目の前にいることが、ただ衝撃だった。

国王……ジョットは何も言わない。ただ無表情で、黙ったまま綱吉を見下ろしている。
言わなければならないことがたくさんあるはずなのに、綱吉は何も言えずにいた。ただ、自分が情けなくて。

その時、

「……この恥曝しめ」
「っ……!」

凛とした、だが酷く冷たい声が響いたと思われたら、渇いた音がして、同時に頬に鋭い痛みが走った。視界が揺れ、頭の芯がぶれる。

「っ、ぅ……!」

頬をぶたれたのだと理解した瞬間、もう二回、三回と強く張られた。頭の芯がぐらついてうなだれたところを、髪を強くつかまれ上を向かされる。

「っ、ぐ……!」
「無様だな」
「っ……!」

視線の先には、冷たくこちらを見下ろすジョットがいて、綱吉はぞくりと背筋を震わせた。静かに、だが鋭い怒気を放つ主に。
理由など、考えなくても綱吉には痛いほど良く分かっている。

「まんまと敵兵に捕らえられ、醜態をさらしたか」
「っ、申し訳…ありま……っ、ぁ゛…!」

とっさに許しを請おうとした言葉は、強引に遮られてしまった。風を切るような音が聞こえたかと思った瞬間、ばしりと鋭い音が響いて、上半身に焼けるような痛みが走ったのだ。

見ると、ジョットが手に細い鞭状の物を持っていて……身体を強ばらせた瞬間、それが綱吉に向かって振り下ろされた。

「っ、ぅ……!」
「軍を取り纏める者がその体たらくとは、国家の名折れも良いところだ」
「ぅぁっ…!も、しわけ…っ、ありませ…ぅっ……!」
「それで良く、のこのこと帰ってこれたものだな」
「っ、っ……!」

鋭い痛みが走るたびに、意識が飛びそうになる。だがそれよりも、綱吉は己の犯してしまった失態が悔しくて堪らなかった。

この至高の王が誰よりも民を愛し、国を愛していることを知っている。それらを守るためには、どこまでも冷徹になれることも。
そして、その臣下には特に厳しく、容赦のないことも。

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