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□小鳥
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豊かな自然と、広大な領土を誇るボンゴレ王国。

その王都の中心地にあるボンゴレ城……国王が国を治め、また住まいでもある豪奢な城の、とある場所で、

「どういうことだよ……!」

若い男の、動揺したような声が響いた。声の主は銀髪の青年で、誰にも聞かれないように注意しながら……だが、その表情は訳が分からないといった様子だ。隣にいた黒髪の男も怪訝な顔をして、困惑を隠せないでいる。
どちらもこの国の象徴である白い軍服の、それも一般の兵より荘厳な装飾の施された衣服に身を包んでいた。

「何故、綱吉隊長が戻られたのにお会いすることができない……!?」
「そうだぜ、一体今どこにいるんだよ?」

今にも掴み掛かりそうな剣幕の青年達に、目の前にいた衛兵らしき男も困ったように、

「それが、陛下のご命令で…地下牢に……」
「何だって……!?」

その言葉に、二人の男は信じられないといった様子で顔を見合わせた。


***


「ぅ……」

肌をひんやりとした空気に撫でられる感覚に、綱吉は薄らと瞳を開けた。どのくらい気を失っていたのか、頭と身体が酷く重い。

周りを見渡せば、四方を石と鉄格子に囲まれた薄暗い地下牢の中で、両腕も手枷で戒められ、天井からの鎖に吊り上げられたままだった。

(く、そ……!)

敵国に捕らえられて、男として最も屈辱的な拷問を受ける日々。今度はいつ辱められるのか……と気を重くして、綱吉はふと違和感に気付いた。

「………?」

何かが違うのだ。肌に触れる空気が。どこか懐かしく、馴染みのあるような……。

「………!」

その時、地下牢に足音が鳴り響いて、綱吉は意識を引き戻された。何者かが、こちらに近付いてきている。

あの調教師か、それとも他の敵兵の男達か……と身構えるが、何となくどちらも違うような気がしてならない。この場所といい、まだ顔の見えない誰かといい、綱吉はこれらの違和感に妙な胸騒ぎを覚えた。

だんだん足音が大きくなって、やがて一人の人間が姿を現した時、

「………!」

綱吉は、驚愕に大きく目を見開いた。
目の前に現れた人物が、信じられなかったのだ。

「陛…下……!」

口から放たれた声は喜びからか畏れなのか、酷く擦れ震えていて。

「な、ぜ……」

それは、自分のたった一人の君主であり、命をかけてお仕えしようと誓った……ボンゴレ王国国王その人だった。
輝くような金髪に、全てを見透かす金の瞳。荘厳な衣装、マントに身を包んだ、まだ年若き国王。

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