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□Snow white
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むしろ、白蘭はツナにだけ優しくて、その他の人間には冷たい印象を受ける。それは、白蘭が企業の跡取りで、やがて父親の会社を継ぐから……人の上に立つ人間として振る舞っているのだと、ツナは幼心に思っていた。
実際、白蘭は学力も高く、有名私立校でトップの成績を保っている。さらに高校生でありながら、すでに父親の仕事を少し手伝っていて……ツナには驚くことばかりだ。

そんな有能な兄が誇りだし、何をやらせても駄目な自分に優しく接してくれることが嬉しくて、ツナは慕っていた。

だが、

「今日も、誰とも話さなかっただろうね?」
「ぅ…う、ん……」

切れ長の瞳に顔を覗き込まれて、ツナは少し身体を強ばらせぎこちなく答える。

優しくて完璧な兄なのだが、何故か白蘭はツナが学校で他の人間と接するのを禁止した。遊ぶどころか、話をするのも駄目だと言う。

理由は、自分達は巨大企業の子息で、周りはそれを潰そうとするライバルや、媚へつらう人間ばかりだから……良い顔をして、内心は自分達を欺こうとしている人間しかいないから、だという。

「ツナちゃん。何度も言うけど、絶対に他人に心を許しちゃいけないよ?皆、蹴落とすことや媚びることしか考えない奴らばかりなんだから」
「う、ん……」

これは、ツナがこの家に来た時からずっと言われていたことだった。
だから、ツナには友達がいない。いつも、学校で一人ぼっちなのだ。

「周りは皆、敵だよ」

だが、ツナは最近そうだろうかと疑問に思うことがある。
確かに、白蘭が言うような人間もいるのだが……そういう人物は何となく雰囲気で分かる。そして、決してそんな人間ばかりではないということも。

先ほど一緒に帰ろうと誘ってきたクラスメイトも、そんな風には思えなかった。

だが、

「分かったかい?」
「っ……!」

指で顎を捕らえられ、上を向かされれば白蘭の瞳があって、

「は、ぃ……」

ツナは、小さくそう返していた。

優しくて完璧な兄。だが、ツナは白蘭を慕うと同時に、少し恐れていた。
ふとした時に見せるどこか冷たい雰囲気、鋭い視線。優しいのに、どこか支配されているような、見えない鎖で縛られているような気がして。

それに、もし言い付けを破るばさらに恐いことが起きるから……。

だから、ツナは白蘭に意見することも、本当は今日クラスメイトの一人と話をしたことも、絶対に言うことができなかった。

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