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□Snow white
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「ただい、ま……」
そのどこか違和感のある、形式的な態度に、ツナは居心地悪そうに応える。
接し方は丁寧で、敬意を払った扱いをされていても、本心ではツナを敬遠し、快く思っていないことが、視線や雰囲気から分かる。
それはツナが愛人の息子だから、当然のことなのかもしれない。
本来なら、そんな人間が本家へ住むことなど許されるはずがないのだが……ツナは訳があって、小学校低学年の頃から、この家に住むことを許されていた。
理由は、ツナの母親……つまり父の愛人である母が、この頃に病気で亡くなったからだ。数多くいる愛人の中でも、父親は特に母を愛していた。その息子だからと、ツナは実の父親に引き取られたのだ。
周囲の強い反対があったにも関わらず。
こうして、ツナは今までの慎ましい生活から一変して、何不自由ない生活を送ることになった。
だが、他の親族や使用人達は、ツナを受け入れてはくれない。しかも、自分を可愛がってくれる父親は、多忙でほとんど家にいることがないのだ。
この広い屋敷にいるのは自分と、大勢の使用人達。
そして、
「ああ、ツナちゃん帰ったんだ?」
「………!」
多くの使用人達の視線を避けるように二階へ上がって、自分に与えられた部屋に入ろうとすると、その前に部屋のドアが開いた。
中から現れた人物を見て、ツナは驚いた後大きな瞳を丸くする。
「白蘭…義兄さま……!」
「お帰り、ツナちゃん♪」
真っ白な髪に切れ長の瞳、すらりとした長身のその青年は、総帥の息子でグループの跡取り……ツナの腹違いの義兄である白蘭だった。
ツナは少しホッとしたように、だが先ほどとはまた違った緊張の面持ちで、
「義兄さま……どうして、こんなに早く…?学校は…」
「うん、今日は午前中で終わりだったんだ。ほら、入りなよ」
白蘭はにっこりと笑うと、ツナの肩を抱いて部屋へ入るよう促した。
部屋の中も、外観と違わず豪華で広い。この持て余しそうなほどの空間は、ツナと白蘭の二人部屋だった。
ツナがこの家に来たのは小学校低学年の頃。まだ小さくて一人では可哀想だろうと、白蘭が一緒の部屋にするよう提案したのだ。
そして、ツナが中学に上がった今でも、それは変わらない。
「最近学校はどう?困ったことはない?」
ふかふかのソファーに一緒に座ると、隣から白蘭がそう尋ねてくる。
義兄の白蘭は、ツナに優しかった。腹違いの義弟で、本来なら仲良くできそうにないのに……父親と一緒で、余所者のはずのツナを可愛がってくれるのだ。