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□伝えたくて
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未来での壮絶な闘いが終わり、過去の世界に戻ってから約数週間。
危険と隣り合わせの日々から解放され、ツナ達は穏やかで平和な毎日を取り戻した。
……はずなのだが、
「……っ!」
ツナは今、これまでにないくらいの緊張に襲われていた。全身をガチガチに固まらせて、ドキドキという心臓の音が聞こえそうなほど。
場所は、並盛から少し離れた場所にある高級ホテル。その中の、とある部屋の前。
(どうしよう…こんな所まで来ちゃったけど……)
先ほどから、ツナはその部屋の前を落ち着きなく行ったり来たりしていた。
理由は、
(スクアーロ、いるかなぁ……)
その目的の人物を思い浮かべながら、ツナは不安になりつつも、頬を赤く染めたのだった。
未来でたくさんの仲間達の助けを借りたおかげで、無事に帰ってくることができたツナだったが……その中でも一番驚いたのは、あのヴァリアーが手を貸してくれたことだった。
特に隊長であるスクアーロは、山本の修行を見てくれたり囮になってくれたりと、かなりの手助けをしてくれたのだ。
だが闘いが終わった後、すぐに過去へ帰らなければならなかったので、彼にお礼を言うことができなかった。それが心残りで、ツナはずっと悶々とした日々を過ごしていたのだ。
それがつい先日、未来での記憶は現代の人物にも引き継がれたということを知り、さらに今ちょうど件の人物が何かの任務で日本に来ていると聞いて……いてもたってもいられず、彼が滞在しているホテルを訪れたのだった。
会うことができる、会ってお礼を言うことができる、と喜んで。
だが、
(突然押し掛けても迷惑だよね…というか、叩き斬られちゃうかも……)
兄弟子であるディーノに頼んで、ホテルと部屋の場所まで教えてもらったツナだったが……いざ来てみると、どうしても次の一歩が踏み出せない。
何しろ現代では、つい最近まで敵同士だったのだ。いや、ヴァリアーからすれば今もそうだろう。そんな所にのこのことやってきて、歓迎されるとは思えない。
(でも、ちゃんとお礼を言いたいし……)
ツナは、どうしてもスクアーロに会いたかった。お礼を言って……その後のことは、分からないのだが。
(よ、よーし……!)
己を奮い立たせると、ツナは部屋のインターホンを鳴らすため手を勢い良く振り上げた。
その時、
がチャリ
「っ……!」
「あ゛?」
指がもう少しでインターホンに触れるというところで、突然部屋のドアが開いた。