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□A wish
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無意識に逃げようとする身体は押さえ付けられて、雲雀とソファーの間に閉じ込められてしまう。
「今日こそは、逃がさないよ?」
「っ……!」
顎をついと持ち上げられて、ツナは息を飲んだ。
雲雀はいつものように、不敵に笑っていた。だが、その瞳はどこか熱を帯びている。まるで獲物を捕らえて離さない、肉食獣のような。
それらが意味するのは、恐らく恋人同士の営みのことで。
(雲雀さん…ずっと我慢してたんだ……)
二人は、一度だけだがすでにそういう行為に及んでいた。だが想像できる通り、一緒にいるだけでも恥ずかしがるツナが、肌をさらしお互いの身体を重ねるなんてとんでもないことで……それはもう、かなりの難儀をしたものだった。
むしろ、そういうことがあったから、余計にツナが恥ずかしくなってしまったと言っても良いかもしれない。
「綱吉……」
「ぁ…ひ、ばりさ……」
端正な顔が、少しずつ近付いてくる。
(そう、だよね…雲雀さん、ずっと待っててくれたんだもん…俺、頑張って答えなきゃ……)
さらに近くなったお互いの距離に、キスされるのであろうと身構える。
「っ……!」
(頑張って……)
そして、雲雀の顔が間近に迫り、もう少しで重なろうとした瞬間、
「――っ!っっ…!」
ツナの限界は、ピークに達してしまったのだった。
声にならない悲鳴を上げ、ぼふっ!と蒸気を出すくらい赤面したかと思うと……突然ポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。
雲雀が、どうしたのだと動きを止めた瞬間、
ボゥッ…!
ツナの額から、オレンジ色の炎が噴き出した。
「……君、もう少しで僕の前髪が燃えるところだったよ」
「……、すまない」
真顔でそんな冗談を言う雲雀に謝るツナは、先ほどとは違っていた。
オレンジ色の瞳に、普段からは考えられないような落ち着いた雰囲気。
死ぬ気モードのツナだ。
どうやら逃げ場がないと悟って、とっさに死ぬ気丸を飲み込んだらしい。
「その状態の君を組み敷いてるなんて新鮮だね。でも、いくら君でも今日は逃げられないよ?」
「いや、逃げるつもりはない」
ツナは先ほどと打って変わって、雲雀を真っ直ぐに見つめながら、だが申し訳なさそうに、
「いつもすまないと思ってるんだ……けど、普段の俺では、まだどうしても恥ずかしくて……」
「………」
「こうやって死ぬ気にならないと、ろくに話せそうにない……」
「ふぅん……まぁ、どちらも君であることに変わりはないから、僕は良いけどね」