Main2
□A wish
2ページ/9ページ
放課後。ツナは廊下の隅っこから、こっそりと雲雀のいるであろう応接室をうかがっていた。
(雲雀さん、怒ってるだろうな……)
足音を立てないようにそろそろと通路を進んで、応接室のドアの前へ立つ。ノックしようと伸ばされた手は、だがすぐに引っ込められてしまった。
(どうしよう…せっかく雲雀さんと恋人同士になれたのに…これじゃ嫌われちゃうよ……)
ツナはずっと、雲雀に申し訳なく思っていた。ツナだって、本当はずっと雲雀といたいし、たくさん話もしたいのだ。
だが、雲雀を見ると胸が信じられないくらいドキドキして、頭の中が真っ白になってしまって。
今も、朝や昼のことを謝ろうと、そして雲雀の仕事が終わるまで待って、一緒に帰ろうと伝えたくて来たのだが……ドアの向こうに雲雀がいると思うだけでもう緊張してしまって、なかなかノックすることができない。
しばらく手を出したり引っ込めたり、ドアの前をうろうろしていたツナだったが、
(や、やっぱり無理だよぉ…雲雀さんごめんなさいっ……!)
一人でその場でじたばたとした後、くるりと向きを変え駆け出してしまった。
だが、
「っ、わぁっ…!?」
背後でドアの開く音がしたかと思うと、伸びてきた何者かの手に腕を捕まれた。そのまま強い力で引っ張られて、応接室の中へ引きずり込まれてしまう。
パニックを起こしかけたツナだが、背後から抱き締められ、その温もりと匂い、そして、
「……綱吉」
「っ……!」
耳元で囁かれた声に、誰なのかが分かって……余計にパニックを起こした。
「ひ、ひひひひばりさっ……!」
「やっとつかまえたよ」
「っっ……!」
心臓があり得ないくらい激しく脈打っている。身体がどんどん熱くなって、特に顔は焼けるようで。
雲雀は、ツナが部屋の前でうろちょろしているのに気付いていたらしい。
カチコチに固まっていると、抱き締められたまま部屋の中央まで連れていかれて……ソファーに押し倒された。
「ひばり、さ……!」
「ちょっと酷いんじゃない?ここのところ、ずっと僕を避けて」
「っ…ご、ごめんなさい……」
雲雀は意地の悪い笑みを浮かべながら、だが少し拗ねたように言う。
謝りつつも、ツナは雲雀の顔をまともに見ることができなかった。顔は、湯気が出そうなくらい熱くなっている。
(ひ、雲雀さんの顔が…こんなに近くに……!)
もっとちゃんと謝らなければならないのに、あわあわと泣きそうになりながら口を開閉させるだけで、何も言うことができない。